2022 Fiscal Year Research-status Report
天候変化により発症する片頭痛に対する五苓散の短期使用効果および無反応例の解析
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21K06693
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Research Institution | Teikyo Heisei University |
Principal Investigator |
石井 正和 帝京平成大学, 薬学部, 教授 (30307061)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 片頭痛 / 五苓散 / 天候 / 治療反応性 |
Outline of Annual Research Achievements |
天候や気圧変化による頭痛に対する五苓散の使用の実態を調査し、五苓散による治療を推進するための課題を明確にするためにアンケート調査を実施した。対象者は天候や気圧変化により頭痛を発症する20歳代~40歳代の男女とした。天気や気圧の変化による頭痛が起こった際に薬で対応したのは、片頭痛群で58.0%、その他の頭痛群で42.5%だった。そのうち、五苓散を使用したことがあるのは、片頭痛群で27.5%、その他の頭痛群で15.1%だった。五苓散の使用方法では、片頭痛群は「頭痛が起こりそうな予兆を感じてから使用した」との回答が、その他の頭痛では「頭痛が起こってから使用」が最も多かった。また片頭痛群では予兆症状として「肩や首がこる」との回答が最も多かった。使用満足度は両群ともに、8割以上の方が満足していた。また片頭痛群とその他の頭痛群の五苓散使用未経験者のそれぞれ77.8%、59.5%は、今後、天候や気圧変化による頭痛に対して五苓散を使用してみたいと回答していた。一方、使用したくないという理由では、「漢方薬の味が苦手である」との回答が両群とも約半数を占めた。漢方薬の味が苦手な人には錠剤を提供していく必要があることを報告した(社会薬学:印刷中)。 診療録を用いた研究では、天候変化(気圧変動)で増悪する片頭痛の患者を対象に、五苓散の短期使用(予兆を感じた時からの服用)による治療効果とその治療反応性に関与する因子を明らかにすることを試みた。国際頭痛分類第3版に基づいて片頭痛と診断された患者のうち、気圧の変動で増悪する片頭痛を有し、五苓散を処方された患者を対象とした。診療録より、五苓散初回処方時の年齢、性別、合併症、既往歴、アレルギー歴、副作用歴、頭痛の特徴(初発年齢、罹患期間、頭痛部位、性状、随伴症状)と、効果判定などの情報を抽出した。約300名の調査を実施したが、統計解析は未実施である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年はコロナ禍で医療機関への出入りができない時期があったこと、研究を実施する予定だった学部生が研究に参加できなかったことなど、当初予定していなかった状況から、徐々に研究ができる状態となり、2022年は診療録を用いた研究は現時点で調査可能な全ての患者から情報を抽出することができた。アンケート調査では、天候や気圧変化により頭痛を発症する20歳代~40歳代の男女を対象に、天候や気圧変化による頭痛に対する五苓散の使用の実態を調査した。その結果、片頭痛群では天候や気圧の変化に伴って生じる頭痛の前に、「肩こり」などの予兆症状を多くの片頭痛患者が訴えることを確認することができた。この情報は、今後、五苓散による治療を普及していくにあたり、薬剤師が服薬指導の際に重要となる症状である。当初は、最終年度にアンケート調査を行う予定であったが、予定を前倒しで実施し、最終年度には本研究結果を広く知っていただくために総説などを発表したいと考えている。診療録調査は統計解析は未実施であるが、情報の抽出は終了していることから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
診療録を用いた研究に関しては、統計解析を行い、治療反応性に関与している因子を明らかにし、五苓散の短期使用による治療反応性を予測するモデルを作成し、結果を公表する予定である。また天候や気圧変化による頭痛にたいする五苓散の使用に関するアンケート調査結果とともに、五苓散の普及に向けて総説としてまとめたいと考えている。 研究課題申請時は、五苓散などの漢方薬は薬局薬剤師の判断で販売できる唯一の頭痛予防薬であったが、これまで処方薬だった頭痛予防薬のジメトチアジンがスイッチOTC化される予定となっている。それ以外にも薬剤師を取り巻く環境は大きく変化し、2020年からは医療機関に対し服薬情報等提供書(トレーシングレポート)を提出することが求められるようになった。トレーシングレポートは、薬局薬剤師が得た情報を処方医に伝えるための文書であり、「即時性・緊急性は低いものの、処方医に伝える必要がある」と薬局薬剤師が判断した場合に作成し、提出するものである。また、服薬指導や服用期間中のフォローアップの結果を適切に医師等に共有するための重要な手段でもある。2022年からは、処方薬の新しい受け取り方として「リフィル処方箋」の制度が導入された。医師の定めた一定の期間内であれば繰り返し利用できる処方箋のことで、医師の診察を受けなくても複数回薬を受け取れる制度である。これらに共通しているのは、薬剤師がチーム医療の中で薬物治療に責任を持つことである。薬剤師が頭痛患者に対して五苓散を勧めるためには、患者の判別や、治療薬の選択、予防薬の効果判定などを、薬剤師が行うことになるだけでなく、必要に応じて医療連携をとることが求められる。そこで、今後薬剤師に必要になると思われるスキルについて、現状と課題を明らかにする調査を実施する予定である。
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Research Products
(1 results)