2021 Fiscal Year Research-status Report
Novel effective combination chemotherapy using epigenetic modifiers for targeting solid tumors
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21K06699
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Research Institution | Kobe Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
細川 美香 神戸薬科大学, 薬学部, 講師 (70548271)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大河原 賢一 神戸薬科大学, 薬学部, 教授 (30291470)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | エピジェネティック修飾薬 / 低酸素 / 併用療法 / 固形がん |
Outline of Annual Research Achievements |
マウス結腸がん細胞(C26)及びマウスメラノーマ細胞(B16)を用いて、低酸素条件として1%または5%酸素の1日間または1週間の前処置を検討した。その結果、低酸素誘導因子 (HIF-1α) のタンパク及びHIF-1α標的遺伝子のmRNA発現は、正常酸素下と比べて1%酸素下のB16での増大が顕著であった。抗がん剤として5-fluorouracil(5-FU)、irinotecanの活性代謝物 (SN-38)、oxaliplatin、paclitaxelを用い殺細胞効果(WST-8アッセイ)を検討したところ、低酸素下の抗がん剤の殺細胞効果はC26よりもB16で低下し、特に1%酸素下の5-FU及びSN-38で顕著であった。これらの結果は低酸素前処置期間による影響を受けなかったため、1%酸素下で1日間前処置したB16においてエピジェネティック修飾薬と5-FU又はSN-38の併用効果を検討した。 低酸素下で減弱した抗がん剤の効果を最も改善するエピジェネティック修飾薬を特定するために、エピジェネティック修飾薬としてDNAメチル化阻害薬、ヒストン脱アセチル化阻害薬、ヒストンメチル化阻害薬、ヒストン脱メチル化阻害薬、アセチル化読み取りタンパク質BET阻害薬を用いて検討した。エピジェネティック修飾薬の前処置条件として、処置濃度は細胞増殖を20%阻害する濃度のIC20値、処置時間は24時間で設定した。低酸素下で減弱した5-FU又はSN-38の殺細胞効果は、DNAメチル化阻害薬、ヒストンメチル化阻害薬、ヒストン脱メチル化阻害薬の前処置により改善した。従って、低酸素により5-FU又はSN-38に耐性を示したがん細胞に対して、一部のエピジェネティック修飾薬が有用であることが示された。今後、エピジェネティック修飾薬が、低酸素による抗がん剤耐性化を改善する機構について調べる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目に予定していた、低酸素下での抗がん剤効果を評価するためのがん細胞の培養条件を設定し、低酸素下で効果が減弱する抗がん剤を選別できた。また、異なるエピジェネティック機構に作用する種々のエピジェネティック修飾薬を用いて、減弱した抗がん剤の効果を改善し得るエピジェネティック修飾薬のスクリーニングを行い、エピジェネティック修飾薬と抗がん剤の最適な組み合わせを探索することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、低酸素で変動しているエピジェネティック修飾機構を調べる。低酸素と正常酸素の比較により、DNAやヒストンに付く修飾基(メチル化・アセチル化)のレベルや、修飾基の挿入と除去に関わる酵素の発現を分子生物学的手法により定量評価する。低酸素で変動するエピジェネティック機構関連遺伝子があれば、その遺伝子をノックダウンさせた細胞で抗がん剤の殺細胞効果を調べる。これらの結果と、1年目に有効と判明したエピジェネティック修飾薬の作用機序の観点から考察する。 次に、低酸素が抗がん剤の効果を減弱させている機構すなわち耐性化機構を、抗がん剤の作用機序に着目して検討する。抗がん剤の殺細胞効果で細胞死に至る経路には、アポトーシス誘導、細胞周期の補足、DNA損傷の増大、活性酸素の産生増大、ミトコンドリア膜電位の低下などがある。これら経路の障害は耐性化に繋がるため、各経路に及ぼすエピジェネティック修飾薬の影響を、正常酸素と低酸素の比較により調べることで、エピジェネティック修飾薬が低酸素に起因する抗がん剤耐性化を改善する機構を明らかにする。また機構への関与遺伝子の発現を、分子生物学的手法により定量評価する。さらに、遺伝子に対する阻害剤やノックダウンにより併用効果への関与を調べる。 低酸素は転移に繋がる運動能や浸潤能を亢進させる可能性があるため、低酸素培養によりがん細胞の運動能や浸潤能が変化しているか検討する。それらが亢進していれば、エピジェネティック修飾薬の併用により、亢進した運動能や浸潤能を抑制できるか否かをmigrationやinvasionアッセイにより評価する。これらの検討により、低酸素下において減弱した抗がん剤効果を、エピジェネティック修飾薬が改善する機構について明らかにする。
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