2021 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the clinical features and the pathogenic mechanisms of drug-induced kidney injury
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21K06710
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中川 俊作 京都大学, 医学研究科, 助教 (50721916)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 抗菌薬 / 腸内細菌 / 短鎖脂肪酸 / グルコース代謝 / 糖新生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、プロトンポンプ阻害薬や抗菌薬に焦点を当てて、これらの医薬品が関連した薬剤性腎障害の実態解明と、発症機序の探索を行うことを目的とする。そこで、2021年度は、抗菌薬の使用が腎機能及び腸内細菌叢へ及ぼす影響を明らかにすること、及び、抗菌薬による腎機能の変化と腸内細菌叢の変化が相関するかどうかを明らかにすることを目指した。 腸内細菌の存在は、腸管上皮細胞、肝細胞及び脂肪細胞におけるエネルギー代謝に関わることが示されていることから、抗菌薬を投与したマウスにおいて腎組織における代謝の変化や腎障害への影響を評価した。2021年度は、抗菌薬によって腸内細菌を除去したマウスを用い、腎臓への影響を調べた結果、抗菌薬によって腸内細菌を除去したマウスでは、腎組織中における糖新生経路が亢進すること、これによって腎組織中におけるピルビン酸濃度が低下することを見出した。さらに、抗菌薬を投与したマウスに対して腎虚血再灌流障害を引き起こすと、抗菌薬を投与しなかったマウスと比較して、尿細管上皮細胞の壊死が重篤となることが判明した。これらの結果は、抗菌薬によって腸内細菌が除去されるような場合、腎臓は障害に対して脆弱となることを示唆する。 また、薬物が腸内細菌叢へ及ぼす影響を検討するために、マウスの腸管粘膜及び排泄された便に含まれる19種類の短鎖脂肪酸や胆汁酸を一斉に測定する方法を構築した。この方法を応用し、マウスに抗菌薬を経口投与することによって腸内容物の組成が著しく変化することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、3年間の間に具体的に以下の事項に取り組むこととした。1. 消化管に影響を及ぼす複数種類の薬物併用が腎機能、腸内細菌叢及び腸管上皮細胞間リンパ球へ及ぼす影響を明らかにする。2. 腎臓外に疾患を有する動物モデルを用いて、プロトンポンプ阻害薬や抗菌薬が腎機能に及ぼす影響を明らかにする。3. 疫学研究により、抗菌薬が関連する急性腎障害の実態を明らかにする。4. 抗菌薬による腎機能の変化と腸内細菌叢の変化が相関するかどうかを明らかにする。 そこで、2021年度には研究実施に必要な分析技術の整備と基本的な概念の検証にあたった。その結果、マウス及びヒトの便を用いて19種類の短鎖脂肪酸や胆汁酸を一斉に測定する方法を構築することができた。また、抗菌薬により腸内細菌を減少させたマウスを用いることにより、腸内細菌叢の変化と腎機能の変化に関連があることを証明した。特に興味深いことに、腸内細菌叢を著しく変化させる程度の抗菌薬を投与した場合でも、腎機能には大きな変化が見られないことを明らかにした。これらの結果から、腸内細菌叢の変化と腎実質障害の発生という2つ以上の要因が抗菌薬が関連する腎機能低下の原因となることが示唆された。以上より、2021年度には当初計画通りに一定の成果が得られたため、研究は概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度には、プロトンポンプ阻害薬と腎障害の関連性について観察研究を行うとともに、そのリスク因子の同定を試みる。データベースは健康保険組合から寄せられたレセプトデータベース及び医療機関の電子カルテデータを用いる予定である。曝露因子としてプロトンポンプ阻害薬に加えて、併用する抗菌薬の種類及び併存疾患に注目する。アウトカムはAKI発症とし、曝露因子それぞれの影響の大きさを推定する。 また、薬物による腸内細菌叢の変化がどのように宿主へ伝達されるかについて、短鎖脂肪酸や胆汁酸の働きに着目した解析を進める。
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Causes of Carryover |
2021年度は概ね当初の計画通りに使用したと考える。約20万円程度が2022年度使用額となったが、これは現在調査を計画している疫学調査のための費用であり、2022年4月に使用予定である。また、2022年度についても当初計画通りに使用する予定である。
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[Journal Article] Risk factors of breakthrough aspergillosis in lung transplant recipients receiving itraconazole prophylaxis.2022
Author(s)
Katada Y, Nakagawa S, Nagao M, Yoshida Y, Matsuda Y, Yamamoto Y, Itohara K, Imai S, Yonezawa A, Nakagawa T, Matsubara K, Tanaka S, Nakajima D, Date H, Terada T.
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Journal Title
J Infect Chemother
Volume: 28
Pages: 54-60
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Effect of Itraconazole and Its Metabolite Hydroxyitraconazole on the Blood Concentrations of Cyclosporine and Tacrolimus in Lung Transplant Recipients.2022
Author(s)
Matsuda Y, Nakagawa S, Yano I, Masuda S, Imai S, Yonezawa A, Yamamoto T, Sugimoto M, Tsuda M, Tsuzuki T, Omura T, Nakagawa T, Chen-Yoshikawa TF, Nagao M, Date H, Matsubara K.
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Journal Title
Biol Pharm Bull
Volume: 45
Pages: 397-402
DOI
Peer Reviewed
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