2023 Fiscal Year Annual Research Report
切迫流・早産治療薬リトドリンのキラル製剤開発による新生児低血糖症の回避戦略
Project/Area Number |
21K06717
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Research Institution | Hoshi University |
Principal Investigator |
落合 和 星薬科大学, 薬学部, 教授 (40381008)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | リトドリン / 胎児 / ラセミ体 / 低血糖症 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、切迫流・早産治療薬の妊婦に対して処方されているリトドリンは、新生児への影響や母体への副作用が多いなどの報告があることから、先進国では使用されなくなり、日本のみが使用している。本研究では、副作用の報告が多い原因として、リトドリンが(±)体であることに着目し、その悪影響を軽減することを目的とし、胎児中へ移行した(±)体のリトドリン濃度を測定することで、母体から胎児への移行性や代謝能を評価した。また、リトドリンは成体の肝臓で硫酸抱合酵素Sulfotransferase1A member1 (SULT1A1)によって代謝されるが、胎児期の肝臓ではSULT1A1が発現しているかについては明らかになっていなかった。本研究では、胎児の肝臓でSULT1A1を定量的PCR法で解析したところ、mRNAレベルでは、胎児の肝臓ではほとんど発現がみられないことが明らかとなった。しかしながら、胎児の肝臓切片を作成し、抗SULT1A1抗体で免疫組織化学染色によって解析したところ、胎児期の肝臓でも中心静脈周囲の肝細胞にSULT1A1の発現が強く門脈へと近づくにつれてその発現が弱まる発現濃度勾配(zonation構造)があることがわかった。成体の肝臓に比べてその発現は弱いものの、胎児期の肝臓においても特定の肝細胞にはSULT1A1の発現がみられるが、その量はきわめて低いことが明らかとなった。さらに、本研究では、薬理活性の強い(-)体のみのリトドリンを妊娠マウスに投与し、その胎児動態を解析したところ、(-)体リトドリンは母体に対して低用量の投与が可能であり、新生児の血糖値の低下を軽減することが示唆された。 以上、本研究から、(-)体リトドリンは母体への投与量を減らすことが可能であることが明らかとなった。
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