2021 Fiscal Year Research-status Report
Determination of cell type(s) in which DLG1 exerts its role during the cardiovascular formation.
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21K06728
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
向後 晶子 群馬大学, 大学院医学系研究科, 講師 (20340242)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | DLG1 / 心臓発生 / 神経堤 / 二次心臓領域 / 発生 / マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、細胞内極性因子として知られるDLG1蛋白質の遺伝子欠損マウスが、高率に先天性心奇形を発症するという発見に基づき、心臓発生、とくに心臓流出路の発生におけるDLG1の機能を、組織特異的Dlg1遺伝子ノックアウトマウスを用いて解明することを目的としている。心臓流出路組織は、心臓神経堤に由来する細胞と、二次心臓領域に由来する細胞によって構成されるため、2021年度は、それぞれの細胞でDlg1遺伝子を欠損するマウスの作製に着手した。Wnt1-Cre(神経堤)、Mef2c-AHF-Cre(二次心臓領域)の2種類のCreトランスジェニックマウス、Dlg1 loxPノックインマウス、Creリコンビナーゼの作用を蛍光発色で可視化できるR26-TLRノックインマウスを、それぞれを作製した海外の研究者から譲受した。2021年度末までに、Wnt1-Creマウス、R26-TLRマウスは飼育と繁殖を開始している。Mef2c-AHF-CreマウスとDlg1 loxPマウスについては、凍結精子からの個体化を学内生物資源センターに依頼し、産仔を得る段階に到達している。 また、Dlg1遺伝子欠損の影響を心臓流出路で観察する対象として、半月弁に着目して発生途上の形態を観察した。その結果、Dlg1遺伝子全身欠損マウスで、半月弁の肥厚や形状の不整が見られることを新たに発見した。これらの表現型は、DLG1の作用メカニズムを考察する上で非常に興味深く、今後の研究の方向性に大きな示唆を与えるものと考えている。 今後、当初から計画していた走査電子顕微鏡での微細構造解析に加え、DLG1の作用機序に関しても検討を加えていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画においては、Dlg1遺伝子組織特異的ノックアウトマウス心臓流出路の形態異常を、主として走査電子顕微鏡で観察することを計画していたが、交付決定額では購入、レンタル共に額が足りず、所属研究室内での観察が不可能になったため、走査電顕については学内別キャンパスの研究室に設置された機器を借用することを新たに計画している。そのため当初計画していた走査電顕による観察は未実施であるが、その代替案として、心臓全載標本の免疫染色・透明化標本を観察し、パラフィン切片HE染色像で示唆されていた、半月弁の肥厚と不整というDlg1欠損マウスの新たな表現型を可視化・確認することができた。 いっぽう、組織特異的マウスの作製に関しては、神経堤特異的Creトランスジェニックマウス、二次心臓領域特異的Creトランスジェニックマウス、Dlg1 loxPマウスの譲受手続きと導入を計画通り進めることができた。また更に、Creによる遺伝子切り出しをモニターするツールとして、R26-TLRマウスを導入することができた。このマウスでは、Cre発現細胞が蛍光で可視化される。このマウスを、野生型マウス、Dlg1 loxPマウスまたはDlg1 KOマウスと組織特異的Creトランスジェニックマウスと組み合わせることにより、Dlg1遺伝子の有無によりそれぞれの細胞系譜の挙動がどのように変化するかを比較することができるようになる。これらマウスの導入を終え、今後、研究に用いる動物系統作出のための交配、遺伝子切り出しの評価、表現型解析へと進むための準備を完了することができた。 これらの進捗を総合的に判断し、全体的に(2)おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
各種遺伝子改変マウスの飼育と交配を進め、細胞系譜特異的Dlg1 ノックアウトマウス、細胞系譜蛍光標識マウスなど、心臓表現型観察に使用するマウス系統を確立する。目的組織でDlg1発現が消失することを組織学的、生化学的に確認した上で、流出路周辺、特に半月弁の組織形態の観察を行い、Dlg1欠損による表現型と細胞系譜の関係を明らかにする。 また、今回発見した半月弁の肥厚に関して文献検索を行う過程で、Dlg1全身ノックアウトマウスで見られる表現型に、膜蛋白質のエクトドメインシェディング関連因子のミュータントマウスと共通のものが多いことを見出した。半月弁の肥厚も両者に共通する表現型である。これに関連して、培養細胞ではDLG1がシェダーゼ分子C末端のPDZ結合モチーフとの結合を介してTGFαの切断制御に関わるという論文が既に報告されている。そこで今後、Dlg1遺伝子欠損マウス半月弁の表現型解析の際に、当初から計画していた走査電子顕微鏡での微細構造解析に加え、シェダーゼの機能不全が生じていないかどうかの確認作業を加える予定である。Dlg1欠損マウスでシェダーゼの機能不全を示唆する結果が得られたら、さらにその詳細を追究する。これにより、Dlg1遺伝子欠損による発生異常のメカニズムを、より多面的に解明できると考えている。
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Causes of Carryover |
遺伝子改変マウスの導入については、当初、Mef2c-Creマウス、Wnt1-Creマウス、loxP-Dlg1マウス、Mef2c-EGFPマウス、Wnt1-lacZマウスの計5系統を導入する予定であったが、特定系譜細胞をより正確に標識するため、Mef2c-EGFPマウス、Wnt1-lacZマウスの導入を中止し、R26-TLRノックインマウスを導入した。このR26-TLRマウスは、CreもしくはDre発現細胞がそれぞれ別の蛍光色素で標識されるため、今後組織特異的Dreマウスを導入することができればさらなる活用が可能な優れたツールである。この変更により、マウス導入導入に係る費用を1系統ぶん減らすことができたが、個々のマウスの輸送費用がコロナの影響もあり高額となったため、全体的にはマウス導入に関する費用は当初の予定を上回る結果となった。 いっぽう、当初の計画では、卓上型走査電子顕微鏡の購入もしくはレンタル使用を予定していたが、交付金が足りず、計画を変更して学内他部局の機器を利用することとしたため、計上していた費用が未使用となった。 これらの変更により、全体としては次年度使用額が生じることとなった。 今回生じた次年度使用額は、研究を計画した時点で希望していた研究予算を大幅に上回る額ではないので、今後の研究を当初の予定通り進めていくために必要な物品購入等に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)