2021 Fiscal Year Research-status Report
Network analyses of sensorimotor transformation by the novel fiber tract 'IPS-FG'
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21K06729
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
山口 淳 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (00314336)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 白質解剖 / 楔前部 / functional MRI / Tractography |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、申請者の研究グループが報告した新規の連合線維束「IPS-FG」の構造と機能を解析するものである。連合線維束「IPS-FG」は、感覚野と運動野の中継地である頭頂間溝(IPS,intraparietal sulcus)と、側頭葉の高次の視覚野である紡錘状回(FG,Fusiform gyrus)を結合することから、その機能と考えられる視覚誘導性動作の神経基盤を解明する。 当該年度は、本神経束の安静時神経ネットワーク(Resting state network)における機能的・構造的な関連を解析した。まず北米のヒトコネクトーム計画HCP(human connectome project)のMRI画像データを用い、構造的結合性(Structural Connectivity)を解析した。本研究における構造的・機能的な解析には、マルチモーダルな脳マップMMP(multi-modal parcellation)を用いた。脳マップMMPにより頭頂間溝(IPS)や紡錘状回(FG)を細領域に区分し、連合線維束「IPS-FG」の各領域への投射の定性的、定量的な解析を施行し、本神経束の構造的結合性(Structural connectivity)を明らかにした。また、マウス脳梗塞モデルを用いて、神経線維束の皮質投射の可塑性を解析する実験系の立ち上げを開始した。次に、安静時fMRIデータを解析し、連合線維束「IPS-FG」の投射領域とDefault mode network(DMN)との定性的、定量的な関連性を解析した。その結果、DMNにおける神経活動には連合線維束「IPS-FG」の著明な関連性は認めなかった。本年度の結果は、連合神経束「IPS-FG」は安静時のDMNには著明な関連は無いが、それ以外の安静時神経ネットワーク(RSN)や他の視覚運動性taskに関与する可能性を示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、申請者の研究グループが報告した新規の連合線維束「IPS-FG」の構造と機能を解析するものであり、その機能と考えられる視覚誘導性動作の神経基盤を解明する。当該年度は、まず予定通りに、頭頂間溝(IPS)や紡錘状回(FG)を細領域に区分し、連合線維束IPS-FGの各領域への投射の定性的、定量的な解析を施行し構造的結合性(Structural connectivity)を明らかにした。次に、連合線維束「IPS-FG」の安静時神経ネットワーク(Resting State Network, RSN)における機能的、構造的な関連を解析した。特に、代表的なRSNであるDefault Mode Network(DMN)との関連性を解析し、著明な関連性は無いことを示した。本結果は、連合線維束「IPS-FG」は、DMN以外のRSN(注意ネットワーク、実行ネットワークなど)や、何らかのtaskに関与していることを示唆しており、概ね予想通りの結果であり、来年度以降の解析の基礎となる成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は、申請者の研究グループが報告した連合線維束「IPS-FG」の構造と機能を解明することである。連合線維束「IPS-FG」は、物体を見ながら把握(grasp)するなどの視覚誘導性動作へ関与すると推察され、本研究ではその構造と機能を統合的に解析し、視覚誘導性動作の神経基盤の一端の解明を目指す。昨年度までに、神経束追跡法(Tractography)や白質解剖により連合線維束「IPS-FG」の構造的結合性(Structural connectivity)を明らかにした。また、その機能的結合性の解析として、代表的な安静時神経ネットワーク(RSN)であるDefault Mode Network(DMN)との関連性を解析した。今後の研究方針として、前年度まで結果を踏まえ、連合線維束「IPS-FG」とDMN以外の安静時神経ネットワーク(注意ネットワーク、実行ネットワークなど)や種々の認知機能タスクとの構造的、機能的な役割を解析する。具体的には、頭頂葉と前頭葉が関係する注意ネットワークと実行ネットワークとの関連を解析する。各ネットワークの神経束ネットワークと機能的結合性と連合線維「IPS-FG」の相関を定性的、定量的に解析する。また、認知機能タスクとして、次年度は運動連想(motor imagery)や読書(Reading)における機能的MRI、Tractographyを解析し視覚誘導性動作における「IPS-FG」の関与を解析する予定である。更に、マウス脳梗塞モデルを用い、神経線維束の皮質投射の可塑性を分子生物学的に解析する実験系を確立したい。
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Causes of Carryover |
本研究の目的は、連合線維束「IPS-FG」の構造と機能を解明することであり、MRI画像のデジタルデータを複数のコンピューターで並列処理することにより構造と機能を統合的に解析している。当該年度は、構造的解析のため神経束追跡法(Tractography)や機能的解析用の計算機(パソコン)やソフトウエアを購入したが、使用するソフトウエアやアプリケーションの習熟に手間取った。それにより購入予定だった解析用計算機(より高性能CPUとグラフィック処理装置GPUを備えるパソコン)の購入を見送った。更に、コロナ禍で対面での学会開催が少なく、オンライン参加のみで、対面による関連学会への参加を見送ったため交通費などの支出はなかった。来年度以降、更なる構造的、機能的解析を進めるためにこれらの物品の購入や、積極的に関連学会での成果を発表予定である。
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Research Products
(5 results)