2022 Fiscal Year Research-status Report
卵管上皮構築におけるエストロゲン受容体ベータを介した分子機構の解明
Project/Area Number |
21K06732
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
岩野 智彦 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (10442930)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 卵管 / 線毛細胞 / 分化 / エストロゲン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、卵管上皮ホメオスタシス維持に関わる分子メカニズムの解明を目的とする。近年不妊症や子宮外妊娠などの異常妊娠が増加しており、管内ホメオスタシスの維持における生体分子機構の解明は、不妊や異常妊娠の理解・治療の基盤となる研究である。卵管内ホメオスタシスの維持に大きな役目を果たす上皮細胞は運動繊毛を有する繊毛細胞と粘液を分泌する分泌細胞で構成され、わずかに存在する未分化細胞からのターンオーバーでその数が維持されている。研究代表者はこれまでの研究において、卵管の未成熟細胞から運動繊毛細胞への分化誘導系を確立し、繊毛細胞分化に関わるエストロゲン経路の一端を明らかにしたが、詳しいシグナルカスケードや分泌細胞への分化制御の解明には至っていない。本研究では、卵管上皮構築におけるエストロゲン受容体ベータ(ER beta)を中心とした分子メカニズムの解明を目的とし、 具体的には以下の3つ課題の解決を目指している。(1) 線毛細胞分化においてER betaが制御する分子機構の解明(下流解析)。 (2) 卵管エストロゲン経路に影響を与える細胞外環境の分子機構の解明 (上流解析)。 (3) 上皮構築や機能に関係する代謝産物の発現解析(代謝と細胞機能の関連解析)。2022年度は、(1)に関して、RNA-seq解析で得られたER betaシグナルの作用する下流遺伝子の機能解析を行なった。(2)に関して、上皮細胞の生育する基底基質の種類や厚さが及ぼす線毛上皮細胞分化への影響を調べた。(3)に関して、エストロゲン投与後の経時的な細胞サンプリングを行い、質量分析装置による卵管上皮細胞の代謝解析を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
学内での所属教室の異動があり、実験環境のとりまとめおよび新しい所属先での研究体制のセットアップのため、一時的に研究が停止する時期があった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、線毛細胞分化におけるER betaが制御する分子機構の解明(下流解析)について、すでに得られたRNA-seq解析結果を元に、さらにパスウェイ解析やGene Ontology解析を進める。細胞構造形成関連遺伝子、シグナル関連遺伝子、細胞周期関連遺伝子等に着目し、それらに影響を与える試薬もしく は遺伝子発現抑制等の操作を行い、線毛細胞分化への影響を調べる。また、分化過程における発現変化を経時的に調べ、エストロゲン経路との直接的な関連性を明らかにする。 さらに、上皮構築や機能に関係する代謝産物の発現解析(代謝と細胞機能の関連解析)について、卵管上皮細胞の分化過程におけるより詳細な代謝解明のため、エストロゲン投与後の経時的な細胞のサンプリングを行い、質量分析による成分分析を進める。分析結果の解析を行い、分化過程に応じて変化する代謝成分を調べ、その機能的意義や遺伝子発現変化との相関性を検討する。
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Causes of Carryover |
所属教室の異動に伴い、予定していた分析実験の一部が行えなかったため、物品購入することができなかった。次年度は、前年に予定していた実験を行い、その分析試薬や物品の購入に充てる。
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