2021 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of cancer elongation system by prosaposin secreted by tumor-associated macrophages
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21K06736
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
鍋加 浩明 愛媛大学, 医学系研究科, 准教授 (60581098)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 大腸癌 / 腫瘍随伴マクロファージ / 神経栄養因子 / プロサポシン / 癌進展 / 癌悪性度 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経が傷ついた時にプロサポシンと呼ばれる物質が増えて神経を守ります。一方、がん細胞が広がっていく時にも、がんの近くの細胞がプロサポシンを放出してそのプロサポシンをがん細胞が受け取っている可能性がありました。これはがん細胞が広がっていく時にプロサポシンががんの栄養のように取り込まれていることを示しています。このようながんが広がっていく仕組みを明らかにすることで、例えばプロサポシンが出ないようにしたり、プロサポシンが効かないようにするような新たながん治療方法が開発できる可能性があります。 大腸がんにおいて、がんの近くの細胞(腫瘍随伴マクロファージ,TAMs)とプロサポシンの関係を調べるため、外科手術で切り取られた39人の大腸がんの組織を顕微鏡で観察しました。すると悪性度の高いがんの周囲にはTAMsが存在し、TAMsがプロサポシンを分泌している様子が観察されました。一方、大腸がん側にはプロサポシン受容体が存在し、大腸がんがプロサポシンを受け取っていると考えられました。これらの結果よりTAMsがプロサポシンを分泌して、がん細胞はそのプロサポシンを受け取って広がっていくと考えられました。 次にTAMsがプロサポシンを分泌する仕組みを解析するために培養細胞での実験を行いました。TAMsがプロサポシンを分泌しないようにすることで、がんが広がる力を弱めることができるかも知れないからです。プロサポシンには分泌されるプロサポシンと分泌されずに細胞内部で分解されるプロサポシンがあり、どちらに切り替わるのかその仕組みはまだよく分かっていません。これまでの実験でメッセンジャーRNAの長さの違いがこの切り替わりに関係していることが分かりました。培養細胞を用いた実験でその切り替えのシステム(ソーティング機構)を明らかにしていきます。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト大腸癌病理組織におけるプロサポシンおよびそのレセプターであるGPR37、GPR37L1と癌の悪性度との関連を調べるため、事前実験で入手した25症例に加えて悪性度の高い大腸癌病理組織を14症例、合計39症例を病理学講座より提供して頂いた。39症例全てについてパラフィンブロックから数百枚の切片を作成し、各部位においてそれぞれプロサポシン、GPR37、GPR37L1についてDAB染色を行った。また腫瘍随伴マクロファージ(TAMs)を検出するためマクロファージマーカーであるCD204、CD163でもDAB染色を行った。一部の症例についてはTAMsがプロサポシンを分泌していることを証明するために、プロサポシンとCD204で蛍光組織化学染色を行った。全ての画像データより陽性細胞数を一定の基準で計測し一覧表を作成した。また他の癌との比較のため胃癌、乳癌、子宮頚癌、肺癌などの組織も提供して頂き染色を行った。 ヒト大腸癌病理組織を使用した実験に並行してマクロファージ培養細胞株を使用した実験も開始した。プロサポシンと蛍光蛋白質融合遺伝子を組み込んだ大腸菌をクローニングし、培養細胞に遺伝子導入することでプロサポシン蛍光融合蛋白質を過剰発現する系を作成した。生きている細胞の中でのプロサポシンの動きを確認可能となった。(ライブセルイメージング)
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Strategy for Future Research Activity |
①ヒト大腸癌病理組織とともに病理診断結果も提供して頂いている。39症例のヒト大腸癌病理組織を腫瘍グレード別に病理所見で分類し、それぞれのグループ内でTAMsにおけるプロサポシンの発現量を解析する。当初、TAMsマーカーとプロサポシンを別々に検出していたがそれでは炎症性に分泌・集積したプロサポシンも検出されてしまう課題が判明した。この問題を解決するため次年度は蛍光免疫組織化学染色による同時検出を行うとともに別のTAMsマーカーを使用する。TAMsはM1型とM2型があり、M1型は炎症性マクロファージである。炎症でもプロサポシンは上昇するため本実験においては組織修復・血管新生・免疫抑制的な役割をもつM2マクロファージにおけるプロサポシンのみを研究対象とする必要がある。CD204に加えCD163をTAMs検出に使用する。 ②培養実験についてはヒト大腸癌培養細胞株HCT116およびSW480を入手し、プロサポシンレセプターGPR37およびGPR37L1の発現量を確認する。また、プロサポシン分泌機構解析の為に蛍光プロサポシン過剰発現系においてソルチリンおよびリソソームマーカーとの共染色を行う。これまでのライブセルイメージングによる実験で細胞内におけるプロサポシン顆粒に少なくとも2種類の動きがあることが判明している。それらが分泌型および非分泌型のプロサポシンのマクロファージ内での動態の違いである可能性がある。これらのソーティングにはソルチリンが関係しており、また、非分泌型のプロサポシンはリソソーム内に輸送される。昨年度作成したプロサポシン以外にも別のプロサポシン遺伝子を作成してプロサポシンの細胞内動態の解析を行っていく。
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Causes of Carryover |
2021年度3月末まで実験を行う必要があり、次年度使用額を0円にすることができなかった。次年度使用額1259円は翌年度分の助成金と合算して当研究に使用する予定である。1259円と少額のため科研費使用計画に変更はない。
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