2021 Fiscal Year Research-status Report
哺乳類特異的構造、横隔膜を進化させた発生機構の解明
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21K06751
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
長島 寛 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (40435665)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 頸神経 / 発生 / 肢芽 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトの呼吸は胸式呼吸と腹式呼吸がある。肺自体には筋がないから、肺を容れるカゴである胸郭の容積を変えて、間接的に肺を膨らませたり縮ませたりしている。呼気は主に膨らんだ胸郭や肺が元に戻る復元力である弾性収縮力によって行われるが、吸気は胸郭の容積を拡大して行われる。胸式呼吸では肋骨を引き上げて胸郭を広げ、腹式呼吸では胸郭の底に張っている横隔膜を緊張させて底を下げ胸郭を拡大している。安静時には主に腹式呼吸が働いている。この横隔膜は哺乳類で進化した形質であるが、それがどのような発生基盤を元にして進化したのか不明である。横隔膜は頸部で作られるが、まずコントロールとして、横隔膜のないニワトリの頸神経の発生の特徴を明らかにしようと試みた。ニワトリの前肢、後肢の間に肢芽を移植すると、形成された過剰肢には筋と胸神経が侵入するが、頸部に肢芽を移植しても筋は侵入するものの、頸神経は侵入しないことが知られている。この要因を探るため、肢芽と共に様々な組織を頸部に移植したところ、肢芽に隣接する体節を移植した時に過剰肢に頸神経が侵入することが分かった。さらに頸神経の伸長に肢芽領域体節からの栄養因子が必要なのか、あるいは頸神経の伸長を頸部体節が阻害しているのかを確かめるため、頸部に肢芽を移植し同時に頸部体節を除去したところ、過剰肢に頸神経が侵入した。よって頸部体節が過剰肢への軸索侵入を阻害していたのである。しかしながら、前肢部の体節を頸部体節へ入れ替えても前肢に神経線維が入ったので、頸部体節による軸索伸長阻害は頸神経に対してだけ有効なようである。これは正常発生においては頸神経が前肢に誤って侵入するのを頸部体節が防いでいる、換言すれば腕神経叢の頭側端の位置を頸部体節が決定している可能性を示唆していると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
論文執筆中につき、おおむね順調。
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Strategy for Future Research Activity |
頸部体節が頸神経の肢芽への侵入を阻害する分子の探索など。
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