2023 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳類特異的構造、横隔膜を進化させた発生機構の解明
Project/Area Number |
21K06751
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
長島 寛 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (40435665)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 頸神経 / 発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
横隔膜は哺乳類特異的な進化的新規形質である。どのような発生機構の変化でこの構造が作られるのかを探るため、ニワトリで横隔膜様構造ができる条件を調べた。ニワトリ胚頸部にHGFビーズを移植するとビーズに向かって体節から筋芽細胞が遊走し、また肢芽を移植すると肢芽に体節由来の筋芽細胞が侵入することが分かっている。よって適切なシグナルがあれば頸体節から容易に筋が作られると推察される。しかしながら、後者の実験では頸部過剰肢に頸神経が伸びていない。これは仮にニワトリ頸部に横隔膜の元となる筋を作っても、それを支配する横隔神経ができないことを示している。脇腹に過剰肢を作るとそこには筋芽細胞、胸神経共に侵入するから、頸部過剰肢に頸神経が侵入しないのは頸部に特異的な特徴である。その原因が頸神経自体にあるのか、その発生環境にあるのかを確かめるため、様々な条件下で頸部過剰肢を作成した。その結果、頸神経自体は過剰肢へ伸びる能力を持っているのだが、頸神経と過剰肢の間にある頸体節がその伸長を阻害していることが分かった。この阻害作用を有しているのは頭側の第5から第15番体節で、それより頭側の体節は持っていなかった。またこの阻害作用で阻害されるのは腕神経叢より頭側の脊髄神経で、神経叢を含むより尾側の脊髄神経は阻害されなかった。ただし、神経叢レベルの感覚神経は阻害され、同レベルの運動神経が共存する場合のみ感覚線維も過剰肢に侵入できた。この阻害作用がニワトリの頸部形態にもたらす意味を探るため、ニワトリ頸部体節を阻害能力のない前肢部体節に交換したが、頸神経の形態に変化はなかった。よって阻害作用が持つ形態的な意味は不明である。ヒトやスッポンとの比較から、ニワトリの頸神経は鳥類特異的な形態である可能性もあり、今後はスッポンを用いた研究が必要である。
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