2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K06754
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
上坂 敏弘 神戸大学, 医学研究科, 准教授 (90304451)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | シュワン細胞 / 腸管ニューロン / 腸管神経系 / 神経系の再生 / 腸管グリア細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
潜在的に腸管ニューロン産生能を有するシュワン細胞の特性を明らかにするために、シュワン細胞系譜の細胞を遺伝学的に標識するDesert hedgehog (Dhh)::CreERT2ドライバーを用いて、蛍光標識された細胞を腸管膜や腸管から回収を試みた。しかし、現時点では、一匹あたりから単離・回収される細胞数が少ないため、まだ遺伝子発現解析には至っていない。そこで最近報告されたマウスとヒトの単一細胞RNA-seqデータを用いてDhh陽性細胞の遺伝子発現プロファイルを解析した。その結果、マウスでは、Dhh遺伝子発現は腸管に入ると検出されないレベルに下がってしまうため、経時的な遺伝子発現変化などを追跡することが困難であることがわかった。そこで第一段階として、迷走神経堤由来の腸管グリア細胞とDhh陽性シュワン細胞系譜の細胞間で遺伝子発現を比較し、シュワン細胞系譜の細胞の有用な遺伝子マーカー候補のリストアップを進め、Dhh遺伝子に代わるマーカーの探索を進めている。また他の末梢神経系のシュワン細胞の単一細胞RNA-seqデータと比較して、シュワン細胞とは異なる遺伝子群についてもリストを作成している。一方で、ヒト胎児においては、Dhh陽性細胞が腸管においてしばらくの間検出されるため、経時的な追跡が可能であることがわかった。ヒトDhh陽性細胞群データを解析したところ、シュワン細胞様細胞、Nestin陽性細胞、bipotent(ニューロン・グリア)様の三つのクラスターに分類できた。さらに迷走神経堤由来の細胞と比較し、ニューロン産生能の活性化に関わる分子群の探索に活用していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
シュワン細胞系譜の細胞をさらにより正確に選択的に標識するためのドライバーマウスを作製している。これにより、より純度の高い細胞の単離が可能になり、RNAシークエンス解析のデータの純度の向上を目指している。今までに公開された腸管神経系の単一細胞RNAシークエンスデータを用いてDhh陽性シュワン細胞系譜の細胞に発現する遺伝子について経時的な変化を解析することで、シュワン細胞系譜の細胞がニューロン産生能を活性化させる際の分子機序に関連する遺伝子探索のリストを作成している。
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Strategy for Future Research Activity |
シュワン細胞系譜の細胞を蛍光標識したマウスから単離したシュワン細胞の初代培養系を用いて、シュワン細胞前駆細胞の移動やニューロン産生能の活性化に寄与するシグナル経路の薬理学的な検証を進める。腸内細菌由来の分子だけでなく、サイトカインや内分泌ホルモンなど多角的に検証を進めていく。シュワン細胞に対して神経栄養因子GDNFは移動を誘発することが明らかになっているが、この細胞には従来知られているRet受容体が発現していないため、異なる受容体を介していることが考えられる。受容体についても、RNA発現解析データを参考にしながら、探索を進めたい。
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