2021 Fiscal Year Research-status Report
長鎖ノンコーディングRNA Malat1による分枝形態形成の調節機構の解明
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21K06762
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
林 徹 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (10454266)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
猪俣 恵 明海大学, 歯学部, 准教授 (40553798)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 顎下腺 / Malat1 / 形態形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
器官固有の機能を存分に発揮するには理に適った形態が求められます。このような観点から形態を理解することは基礎医学にとって重要であり、特に発生における形態形成の過程を明らかにすることが大切です。例えば肺や膵臓などの形態形成の場合、上皮と間葉とが相互作用し、上皮の先端が枝分かれを繰り返しながら伸長する分枝形態形成という様式が知られています。分枝形態形成の制御機構については、胎仔マウス顎下腺がモデル器官原基として知られており、細胞成長因子を介した組織間相互作用などの研究がなされてきましたが、分枝形態形成の調節機構の全貌は未だ明らかになっていません。近年、これまで看過されていたゲノムDNA領域から、数万種におよぶ長鎖ノンコーディングRNA(lncRNA)が転写されていることが明らかになっています。タンパク質として翻訳されない lncRNAの機能発現様式は多岐に渡り、細胞・組織特異的あるいは時期特異的に発現することが示唆されています。したがって、分枝形態形成もlncRNAによって調節されていると考えるのが妥当ですが、報告例はありません。 この様な背景のもと、私たちはlncRNAのひとつであるMalat1が胎仔マウス顎下腺の分枝形態形成の調節に関与しているデータが得られました。本研究は、胎仔マウス顎下腺を分枝形態形成のモデル器官原基とし、lncRNAのひとつであるMalat1について発現パターンとその調節機構、機能発現様式を調べることで分枝形態形成におけるMalat1の機能を明らかにします。現在は胎仔マウス顎下腺におけるMalat1の局在パターン、Malat1発現が制御される仕組み、どのように分枝形態形成を調節するのかについて調べています。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
胎仔マウス顎下腺は胎生期を通じて形態および機能に関する分化が進行し、未成熟な上皮が唾液腺上皮へと成熟していきます。そこで胎生期を通じたMalat1発現レベル(生体内; in vivo)の変動を調べたところ、ある発生ステージで有意な変動がみられました。この発生ステージは顎下腺上皮が機能的に分化する時期として考えられています。形態的な分化にMalat1が関与することは予備実験の段階ですでに明らかになっていましたが、興味深いことに機能的な分化にも関与しうることが示唆されました。また、in vitroにおいてMalat1発現レベルを調節したところ、上皮間葉相互作用を仲介する因子、分化、増殖などに関する遺伝子マーカーの変動も明らかになりました。また、発生初期の顎下腺上皮は一見すると終末部と導管から構成されていますが、当然ながらヘテロな細胞集団と考えられます。このことを踏まえたうえで、部位あるいは細胞レベルでのMalat1発現を明らかにするための準備も予定通り進めることができました。
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Strategy for Future Research Activity |
予定通り、Malat1の機能発現様式を明らかにするための準備と実験を遂行します。Malat1はタンパク質をコードしていないノンコーディングRNAなので塩基配列からその機能は推定できません。したがってMalat1 と相互作用している因子を検出・同定することが、顎下腺における機能発現様式の解明にとって重要です。そのため顎下腺上皮をホモジナイズし、化学的に修飾したプローブを用いて相互作用している因子もろともMalat1を「釣り上げる」方法を採用します。このとき、解析における非特異的なノイズをできるだけ除去するため、プローブの設計とその評価が大切になります。この過程をしっかり準備・検討することで高解像度のデータを取得することを目指します。
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Causes of Carryover |
消耗品を節約しつつ効果的に用いた結果、若干の次年度使用額が生じました。引き続き23年度も必要な物品に必要な助成金を用いることで効率的にデータを取得し、計画を前進させていきます。
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