2022 Fiscal Year Research-status Report
Mechanisms of triggered activity in lethal arrhythmias: in silico study
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21K06776
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
津元 国親 金沢医科大学, 医学部, 准教授 (70353331)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
倉田 康孝 金沢医科大学, 医学部, 教授 (00267725)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 生理学 / 不整脈 / 細胞・組織 / 生物物理 / フィジオーム |
Outline of Annual Research Achievements |
循環器系疾患は、我が国における死因上位を占めており、中でも心臓不整脈(心室性不整脈)は突然死に関連する。本研究は、心室性不整脈が発症する「きっかけ」となる現象(トリガードアクティビティー)の発生機序を明らかにし、突然死の予防を可能にする方法論を開発することを目標としている。例えば、QT延長症候群で診られる心室筋細胞活動電位の再分極過程の異常は、活動電位の終了前に一過性の脱分極をもたらす。この一過性脱分極(Early afterdepolarization: EAD)が、心室頻拍・心室細動といった致死性不整脈発症のトリガーになると考えられてきた。しかしながら、EADがどのように心室頻拍・細動を惹起するのかは未だ理解できていない。昨年度に引き続き、ヒト心室組織モデル上での興奮伝播ダイナミクス解析のためのコンピュータシミュレーションを継続して実施した。心室内において(1)EADが島状に発生し、かつ複数のEADクラスターが組織内で疎らに存在する;(2)EADクラスターが疎らに存在することによる空間的な再分極電位不均質性の発生とその境界面の特異的形状;以上の2つの条件によって心室頻拍・細動発症のトリガーとなる新たな興奮波としてトリガードアクティビティーが形成されることが明らかとなった。本成果は、EADの発生から致死性不整脈の発生に至るトリガー生成機序の解明に資する重要な理論的成果であり、今後の展開の基礎になるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の計画では、旋回性リエントリー興奮波の発生をもたらすトリガードアクティビティーの生成機序を解明することを目標とし、興奮伝播シミュレーションを繰り返し実施しつつ解析を進めた。その成果の一部は、国際生理学会連合総会、日本不整脈心電学会学術集会、日本薬理学会年会、日本生理学会大会等にて報告した。一連の成果は、論文として現在投稿中である。またさらなる解析結果をとりまとめた論文を投稿する準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究遂行上、現在大きな問題点はなく計画変更の必要はない。引き続き研究計画に沿って研究を実施する。 ヒトの心室筋実細胞を使った最新の電気生理実験結果を基に開発された数理細胞モデルとして2011年に提案されたO’Hara等の心筋モデル(O11モデル)や、2006年に提案されたten TusscherとPanfilovのヒト心筋モデル(TP06モデル)などがある。これまでに得られた成果は、2005年に倉田等によって提案された心筋ユニットモデル(Kurataモデル)を用いたものである。トリガードアクティビティー形成が、それら細胞モデルの違いに影響されるのかは、トリガー生成機序の普遍性を確かめるうえで重要となる。Kurataモデルを使った心筋シート興奮伝播シミュレーションを実施しながら、O11モデルやTP06モデルを使った心筋シートモデルの構築と興奮伝播シミュレーションを実施してきた。O11モデルやTP06モデルはモデル変数の自由度が高く、その分計算に長時間を要する。組織サイズや組織形状、計算時間の短縮なども検討しながら、トリガー生成機序の普遍性について検討する。 最後に不整脈発症の予測・予防可能性を検討する。準備的研究として、一過性外向きカリウムチャネル電流の抑制がトリガードアクティビティーの形成を抑制する可能性があることが得られた。この解析を進めることで、発症予防の可能性を検討する。そして次年度新たに得られる結果を論文にまとめ、関係学会で報告する。
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Causes of Carryover |
年度半ばにして研究室の計算機サーバーが2台故障してしまい、計算機リソースが不足してしまった。そのため、修理をメーカーに依頼する計画であったが、本研究室の計算機サーバーは生産終了品かつ修理部品も手に入らず、修理が不可能であった。このことにより未使用額が発生した。次年度は数値シミュレーションの実施と得られたデータの解析用に新たに計算機を導入する計画である。
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