2022 Fiscal Year Research-status Report
人工受容体遺伝子導入による内因性オキシトシンの疼痛受容・調節機構の解明
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21K06779
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
吉村 充弘 産業医科大学, 医学部, 講師 (00464462)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 陽一 産業医科大学, 医学部, 教授 (10232745)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | オキシトシン / 化学遺伝学的手法 / 疼痛 / 下行性疼痛抑制系 |
Outline of Annual Research Achievements |
オキシトシン(OT)は疼痛伝達に関わるが、詳細な機序は解明されていない。我々は、OTニューロン特異的に薬剤興奮性人工受容体(hM3Dq)と赤色蛍光タンパク(mCherry)を発現させた遺伝子改変ラットを作出し、疼痛制御における内因性OTの役割について解明することを目的とした。 2年目の研究実績の概要は以下のとおりである。(1)OT-hM3Dq-mCherryトランスジェニックラットの維持・繁殖を行い、hM3Dqの外因性リガンドであるクロザピン-N-オキシド(CNO)によってOTニューロンが特異的に活性化することを示した。(2)CNO皮下投与後、下行性疼痛抑制系として知られる縫線核(DR)と青斑核(LC)が有意に活性化し、脊髄後角における抑制性介在ニューロンが活性化した。(3)CNO皮下投与後、脊髄後角における遺伝子発現パターンの変化を、RNAシークエンス法により見出した。(4)内因性OTニューロンの活性化によって、神経障害性疼痛モデルラットおよび炎症性疼痛モデルラットにおける機械刺激閾値と温覚閾値が有意に上昇し、OT受容体アンタゴニスト腹腔内投与もしくは髄腔内投与によってこれらの効果が消失した。(5)炎症性疼痛モデルラットにおいて、内因性OTの活性化は視床下部-下垂体-副腎軸を活性化させることなく抗炎症効果を発揮した。(6)内因性OTが肥満細胞における脱顆粒を抑制し抗炎症効果を惹起した。これらの結果は、内因性OTが液性および神経性調節を介して疼痛伝達抑制と抗炎症効果に関与することを示唆する。以上の成果は国際学術誌に掲載され、本研究課題は当初の計画通りに進捗している。 3年目(最終年度)は、疼痛のみならず情動行動を含めた様々な行動に関わる内因性OTの役割を解明する。また、これまでに得られた知見について包括的かつ先駆的なディスカッションを行い、翌年度以降の研究につなげる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画通り、極めて順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画は順調に進捗している。2年目の研究計画であった炎症下における内因性オキシトシンの視床下部-下垂体-副腎軸への関与、および肥満細胞と内因性OTの関係を解明し、これらの成果は国際学術誌に掲載された。 最終年度は様々な疼痛モデルを用いた内因性オキシトシンの役割解明を目指す。オキシトシンは、疼痛のみならず様々な情動行動にも関与している。現在我々が興味を抱いているのは、乳幼児期のオキシトシン暴露による成体の情動行動変化である。トランスジェニックラットを用いる利点の一つは、乳幼児期からCNOの全身投与によってオキシトシンニューロンが活性化できることである。このように、トランスジェニックラットならではの利点を生かした研究を行うことが最終年度の研究計画である。これらは、翌年度以降の研究にも繋がるものであると確信している。
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Causes of Carryover |
今年度までの研究計画が順調に進み、予定していた試薬購入の必要がなくなったため未使用額が生じた。また、2023年度の動物飼育費が当初の見込みを上回る予定であるため、次年度使用予定額として計上した。
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[Presentation] Endogenous oxytocin exerts anti-nociceptive and anti-inflammatory effects via neuronal and humoral pathways in rats2022
Author(s)
Mitsuhiro Yoshimura, Haruki Nishimura, Kenya Sanada, Satomi Sonoda, Kazuaki Nishimura, Kazuhiko Baba, Naofumi Ikeda, Takashi Maruyama, Yuki Nonaka, Ryoko Baba, Tatsushi Onaka, Takafumi Horishita, Hiroyuki Morimoto, Yasuhiro Yoshida, Makoto Kawasaki, Akinori Sakai, Becky Conway-Campbell, Stafford Lightman, Yoichi Ueta
Organizer
第95回日本内分泌学会学術総会
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[Presentation] Endogenous oxytocin alleviated nociceptive response by altering gene expression in the spinal dorsal horn2022
Author(s)
Mitsuhiro Yoshimura, Haruki Nishimura, Kenya Sanada, Satomi Sonoda, Kazuaki Nishimura, Kazuhiko Baba, Naofumi Ikeda, Takashi Maruyama, Yuki Nonaka, Ryoko Baba, Tatsushi Onaka, Takafumi Horishita, Hiroyuki Morimoto, Yasuhiro Yoshida, Makoto Kawasaki, Akinori Sakai, Becky Conway-Campbell, Stafford Lightman, Yoichi Ueta
Organizer
The International Congress of Neuroendocrinology
Int'l Joint Research
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