2021 Fiscal Year Research-status Report
Novel physiological function of heart in neonatal hypoglycemia
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21K06780
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
川岸 裕幸 信州大学, 学術研究院医学系, 助教 (30819082)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 糖代謝 / 心筋細胞 / 新生児 / カテコラミン |
Outline of Annual Research Achievements |
新生児期の哺乳類において、カテコラミンは低血糖ストレス応答に重要な機能をもつ。最近我々は、新生児マウス単離心室筋細胞をβアドレナリン受容体(AR)作動薬であるイソプロテレノール(ISO)で処理すると、急速かつ有意な糖代謝亢進が起こり、乳酸分泌が増加するという知見を得た。乳酸は、新生児期などでは重要なATP基質としてはたらく一方、細胞間のシグナル伝達因子として機能することが近年明らかになっている。そこで、心室筋細胞のβAR刺激による糖代謝制御機構を解明し、その代謝物である乳酸の生理機能について新たな知見を得ることを目的として、本研究を実施した。始めに、心室筋細胞のβAR刺激によって変化する代謝物を網羅的に定量するために、メタボロミクス解析を行った。その結果、ISO処理群では、グルコース-6リン酸や乳酸などの糖代謝物が増加していた。続いて、細胞外フラックスアナライザーを用いて、βAR刺激による糖代謝制御機構の解析を行った。ISOによる乳酸分泌亢進は、グルコース非存在下でも生じること、グルコースを起点とした糖代謝経路を阻害する2-deoxyglucoseで処理しても消失しなかったことから、βAR刺激は心室筋細胞内のグリコーゲン分解を促していることが示唆された。これら単離心室筋細胞で見られた現象が、制定においても同様に認められるかについて検討を行った。出生後1日目の新生児マウスにISOを皮下投与し、血中乳酸濃度を定量した。すると、ISO投与後急速に血中乳酸濃度が上昇した。以上の結果から、新生児マウスの心室筋細胞は、βAR刺激によってグリコーゲン分解を亢進し、乳酸を細胞外に分泌することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、カテコラミンによる心室筋細胞の糖代謝亢進について、βAR依存的であること、グルコース代謝ではなくグリコーゲン代謝を起点とすることを、細胞外フラックスアナライザーによる解析で明らかにしている。また、メタボロミクス解析についても予定通り実施し、それらの結果と一貫性のある知見が得られた。実験計画の遂行について大きな問題はなく、その進捗についても概ね予定通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
βAR刺激による糖代謝制御機構の解明と、心筋細胞から分泌された乳酸の生体における役割、機能の解明を目指して研究を進めていく。2022年度は、マウス単離心室筋細胞の糖代謝制御機構について、薬理学的、遺伝学的手法を用いて引き続き解析を行う。また、心筋細胞特異的遺伝子ノックアウトマウスを用いた解析も進める。乳酸トランスポーターを心筋細胞特異的にノックアウトし、その表現型を解析することで、心筋細胞からの乳酸分泌を阻害した際に影響が表れる器官を特定し、どのような表現型を示すかを確認する。さらに、特定した器官の細胞特異的に乳酸受容体をノックアウトする。これらのノックアウトマウスの表現型を比較することで、心筋細胞から分泌される乳酸の生理的機能の同定を目指す。
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Causes of Carryover |
当初購入を予定していたPCを他の寄付金で購入したため、本年度の残額が生じた。残額については消耗品(細胞培養用資材)の購入に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)