2021 Fiscal Year Research-status Report
脊髄小脳変性症でのPKCリン酸化を介した神経保護機構の解明と新規治療法への応用
Project/Area Number |
21K06801
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
白藤 俊彦 神戸大学, 医学研究科, 特命助教 (30595765)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上山 健彦 神戸大学, バイオシグナル総合研究センター, 教授 (80346254)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 脊髄小脳変性症 / リン酸化 / PKC |
Outline of Annual Research Achievements |
脊髄小脳変性症(SCA)患者の小脳プルキンエ細胞ではPKCリン酸化亢進が共通して起こり、小脳プルキンエ神経保護的に働くことが報告されている。 本研究の目的はSCAでリン酸化が亢進するPKCリン酸化基質やそのシグナル経路を同定し、そのPKCリン酸化経路をターゲットにしたSCA に共通して適用できる新規治療法を開発することである。 本年度は、SCAでPKCリン酸化が亢進する基質の同定を行った。第1に小脳プルキンエ細胞に発現し、SCAや神経変性疾患に重要であるタンパク質を候補として、細胞レベルでPKCによるリン酸化があるのかを同定した。SCA38、46、18 の原因遺伝子ELOVL5、PLD3、 IFRD1や、以前行った小脳をPKC刺激をして得たリン酸化プロテオームで同定した、GOLGA5、MTFR1L、 NSFL1C、TOMM70、VCP、PLEKHG4の9つのタンパク質にFLAGタグを付加した。そのプラスミドを細胞に導入し、その細胞をPKC刺激薬で処置し、pSer PKC AbでIBを行った。その結果、VCP, PLEKHG4がPKCによりリン酸化を受けることを確認した。 また、網羅的に小脳プルキンエ細胞で亢進しているPKCリン酸化基質を同定するための網羅的リン酸化プロテオームについては、マウスの全脳を用いた条件検討で、リン酸化変化の実験間の変動が大きいために脱リン酸化酵素阻害の手法を改善しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までは研究の第1段階である小脳プルキンエ細胞で亢進するPKCリン酸化基質を同定することを中心に行った。 マウス小脳を用いた網羅的リン酸化プロテオームは、実験条件の設定に時間を要したが、もう一つのSCAや神経変性疾患に重要なタンパク質のPKCリン酸化を細胞で同定する系は順調に施行でき、2つの候補(VPC, PLEKHG4)を同定し、そのリン酸化部位も同定した。 そのリン酸化部位のリン酸化欠損、模倣変異体の作製もできており、現在その小脳プルキンエ細胞や神経系での機能の解析を行っているため、おおむね順調に発展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、VPC、PLEKHG4のリン酸化変異体を用いた機能解析を本格的に行う予定である。 VPCはタウオパチーにも重要なATPaseであり、細胞死に関与している可能性がある。また、PLEKHG4は細胞骨格を制御するsmall G proteinのGEFであり、細胞形態の変化に関与している可能性がある。これらの機能とPKCリン酸化の関連を解析する。 また、マウスの脳を使った網羅的リン酸化プロテオームを行う。実験間変動を防ぐための手法の試行錯誤を終えており、実際に行う予定にしている。
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Causes of Carryover |
網羅的リン酸化プロテオームを施行する予定にしていたが、条件検討に当初の予定よりも時間が必要になったため、その費用を支出することがなく、次年度使用額が生じました。 翌年度分と合わせて、網羅的リン酸化プロテオームに使用する予定にしています。
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