2021 Fiscal Year Research-status Report
New therapeutic strategies for diastolic heart failure using extracellular matrix
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21K06805
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
岩田 和実 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60305571)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 みさき 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80533926)
天ヶ瀬 紀久子 立命館大学, 薬学部, 准教授 (60278447)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 心線維化 / 細胞外マトリックス / NADPHオキシダーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
心不全の約50%を占める「拡張機能不全型」心不全は、有効な治療法がないため予後が不良である。拡張機能不全の主因は過剰な心線維化であり、筋線維芽細胞の活性を制御する新しい治療法の登場が待たれる。一方で心傷害部位の線維化組織による置換は心臓破裂を防ぎ、心臓保護に重要な役割を果たしている。申請者は活性酸素産生酵素の一つであるNOX1/NADPHオキシダーゼ(NOX1)を欠損した (NOX1-KO)心筋芽細胞株H9c2で産生される数種の細胞外マトリックス (ECM)が「筋線維芽細胞の活性を抑制」することを見出した。本申請研究では「新たな線維化抑制因子としてのECM」による心傷害後の心臓保護と過剰な筋線維芽細胞の活性化抑制の両立を目指し、「拡張機能不全型」心不全の新たな予防および治療法の開発に繋げる。NOX1-KO H9c2で発現上昇が認められたECM分子のうち2種の遺伝子を欠損させたところ増殖作用が回復したことから、これらECM分子が線維化抑制因子として作用することを見出した。既に選出した候補ECMによる筋線維芽細胞の増殖抑制作用は部分的であり、抑制作用のより強いECM分子が存在すると考えられる。本年度はさらに候補ECM分子の抽出を行うため、線維化の抑制作用が報告されているsmall leucine rich proteoglycans (SLRPs)に注目して検討を行った。NOX1-KO H9c2においてSLRPsの遺伝子発現を検討したところ、4種の遺伝子で発現上昇が認められた。NOX1-KO H9c2で発現上昇が認められたSLRPs分子をゲノム編集法により欠損させたところ、1種類のSLRPs分子の欠損により、NOX1-KO H9c2で認められた筋線維芽細胞の増殖抑制効果が回復した。以上より今回抽出したSLRPs分子を新たな線維化抑制ECM候補として、引き続き検討を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
NOX1-KO H9c2においてSLRPsの遺伝子発現を検討したところ、4種の遺伝子で発現上昇が認められた。NOX1-KO H9c2で発現上昇が認められたSLRPs分子をゲノム編集法により欠損させたが、欠損を確認するための特異的な抗体が存在しなかったため,細胞のクローニングを行い,遺伝子配列により遺伝子の欠損を確認する必要があり,予定よりも時間が掛かってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は候補遺伝子を高発現させたH9c2細胞を作製し、心線維芽細胞の増殖および線維化の原因となる1-3型コラーゲンおよびフィブロネクチン遺伝子および蛋白発現に対する作用を検討し候補ECM分子の絞り込みを行う。 続いて、絞り込みを行った候補ECMを発現するウイルスベクターを用い、病態モデルに対する効果について検討する。 1) 候補ECMの保護効果を、心筋細胞の広範囲な脱落が生じるマウス冠動脈の結紮による心筋梗塞モデルを用い検討する。生存率、死亡例については心破裂の有無、心肥大(心重量/脛骨長比)、組織学的検討としてトロポニンIの免疫染色による心筋細胞残存率およびTUNEL染色によるアポトーシス数を心保護効果の指標として評価する。 2) 線維化抑制効果を「拡張機能不全型」心不全モデルである食塩感受性 Dahl ラット、アンギオテンシンIIの持続投与による高血圧症モデル、大動脈弓狭窄による心肥大モデルもしくはストレプトゾトシンによる糖尿病モデルマウスを用い検討する。心線維化は組織学的(シリウスレッド染色)および生化学的検討(ハイドロキシプロリン含量およびフィブロネクチン発現量)により、心機能の変化は心エコーおよび左心室内に挿入したプローブを用いて評価する。
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Causes of Carryover |
本年度に動物モデルを用いた実験を行う予定であったが,候補ECMの抽出に予定より多く時間がかかってしまった.次年度には候補ECMの保護効果を、心筋細胞の広範囲な脱落が生じるマウス冠動脈の結紮による心筋梗塞モデルを用い検討する。さらに線維化抑制効果を「拡張機能不全型」心不全モデルである食塩感受性 Dahl ラット、アンギオテンシンIIの持続投与による高血圧症モデル、大動脈弓狭窄による心肥大モデルもしくはストレプトゾトシンによる糖尿病モデルマウスを用い検討する。
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