2023 Fiscal Year Research-status Report
ペプチドミクスを用いた妊娠高血圧症候群早期診断マーカーの探索
Project/Area Number |
21K06808
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
福冨 俊之 杏林大学, 医学部, 助教 (30439187)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 妊娠高血圧症候群 / プロテオミクス / ペプチドミクス / 診断マーカー / メタボロミクス / アミノ酸分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
妊娠高血圧症候群 (HDP,PIH) は、5~7%の妊婦に発症する高血圧を主体とした疾患である。その重症化は、母体・胎児双方に重大な合併症の原因となる。HDPの病因・病態については、今なお、不明な点が多く、妊娠の中断以外には根治的な治療法がなく対症療法が中心である。そのため、迅速な医療介入が発症および病態悪化の抑制に重要である。しかし、現在、HDP発症を予知する有効な方法はない。従って、本研究では、HDPの早期診断につながる有用な発症予知マーカーの創出を目的とし、血清または血漿中のペプチドを中心とした網羅的な解析を実施する。加えて、アミノ酸およびタンパク質についても解析を行う。 これまでに、HDP (PIH) 発症患者4例および非発症患者4例の血清試料を用いた血中ペプチドミクス解析を行った。アイソバリックタグを用いた比較解析を行った結果、HDPで増加または減少するいくつかのペプチドまたタンパク質の部分配列を同定した。Coagulation factor V、CD5 antigen-like、FibronectinはHDPでピーク比が2倍以上の増加を示した。Dermcidin、Transgelin-2、Tropomyosin alpha-4 chainはHDPでピーク比が半分以下の減少を示した。 また、前年度に引き続き、試料採取および解析手法の最適化を行った。所属学部付属病院臨床検査部の協力を得たプラットフォーム構築の結果、現在までに300検体以上の血液検体を採取することに成功した。解析手法の最適化においては、昨年度の報告書に記載の通り、試料を血清から血漿試料へと変更し、その試料抽出法の検討および最適化を行った。また質量分析計での分析方法を従来の質量分析法の1つであるショットガン法に加え、MRM技術を応用したDIA法を追加した。加えて、血漿中の遊離アミノ酸分析を可能とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在までの研究の進捗状況は、やや遅れている。本研究計画において、ペプチドミクスおよびプロテオミクス解析は必要不可欠な研究手法であり研究の中心的な解析手法である。質量分析計は、そのペプチドミクス解析、プロテオミクス解析およびアミノ酸分析の中核をなす分析装置である。 前年度までに、質量分析計の複数回の不具合および半導体不足による復旧までの長期化などの諸事情により研究計画が大幅に後ろへとずれ込んでおり、本年度の研究計画へも影響を及ぼし遅延が生じている。加えて、分析試料を血清から血漿へと変更したことにより、血漿試料に対する方法の条件検討や最適化などに時間を要した。 以上より、当初の研究計画より研究の進捗状況に遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」に記載したように、当初の研究計画より、やや遅れている。そのため、科研費補助事業期間の延長申請を行い、承認して頂いた。よって、概ね当初の研究画調書に則って、今後も研究を遂行予定である。但し、昨年度「研究実績の概要」に記載したように、当初の解析対象であった血中ペプチドのみならず、血中のアミノ酸等も解析対象とする。加えて、分析対象試料を血清から血漿試料へと変更し研究を推進する。 また、「現在までの進捗状況」に記載したように、研究の進捗状況に遅れが生じているため、研究協力者を増員し協力を仰ぎ、迅速な研究遂行を目指す。
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Causes of Carryover |
「現在までの進捗状況」に記載のように、前年度までに質量分析装置の不具合と半導体不足による復旧までの長期化による影響により、研究計画が大幅に後ろへずれ込み大きな遅延が生じてしまった。そのため、当該年度に使用予定であった消耗品等の購入等を控えたため、予定額との差異が生じることとなった。また、旅費に関しては、感染症の影響を鑑み学会参加等を見送ったため研究計画の使用額と差異が生じた。
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