2023 Fiscal Year Research-status Report
Therapeutic strategy for heart failure with preserved ejection fraction: Analysis of the signaling pathway involved in the cardioprotection through inter-organ interactions
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21K06810
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
三上 義礼 東邦大学, 医学部, 助教 (80532671)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 駆出率の保たれた心不全 / 糖尿病性心筋症 / 拡張機能障害 / ニューレグリン1 / ErbB2 / トラスツズマブ / 1型糖尿病 / 臓器連関 |
Outline of Annual Research Achievements |
駆出率の保たれた心不全(HFpEF)は、拡張機能不全が生じているものの収縮機能は保たれている心不全で、有効な治療法は未だ確立していない。本研究は、HFpEFの発症機序の解明から、その治療法を見出すことを目的とする。 Streptozotocin(STZ)誘発1型糖尿病(T1DM)モデルマウスは、STZ投与4週後(STZ-4W)において左室拡張機能障害が認められたものの左室駆出率は保たれていた。STZ-4Wマウスでは心保護因子のひとつNeuregulin-1 (NRG1) の血中濃度が上昇していた。NRG1は心臓、腎臓、肝臓において発現が亢進しており、臓器連関機構により血中濃度が上昇し、冠循環や細胞間連関を介して心室筋細胞に作用すると考えられた。NRG1の受容体ErbB2 (HER2) を遮断する目的で抗ErbB2抗体製剤Trastuzumab (TRZ) をマウスに腹腔内投与したところ、コントロール群ではTRZ投与による心機能の変化が認められなかったのに対し、STZ-4WマウスではTRZ投与により左室駆出率が有意に低下した。さらに心室では、AktのSer-473のリン酸化レベルがTRZ投与によりさらに低下していた。NRG1の上流シグナル経路を探索したところ、NRG1の転写調節領域にKLF10の結合配列の存在を見出した。KLF10は発現・局在がNRG1と相関しており、NRG1の発現を制御している可能性が示唆された。 以上の結果から、NRG1は糖尿病性心筋症早期ステージにおいて代償的に発現が増加し、NRG1-ErbB2/4-Akt経路を介して左室収縮機能の維持に寄与すると考えられる。糖尿病性心筋症早期に左室拡張機能障害が左室収縮機能障害に先行する理由の一部はこの機序で説明できる。本成果はJournal of Pharmacological Sciences 誌に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
左室駆出率が保たれているが左室拡張機能障害が認められる糖尿病性心筋症早期ステージにおいて、左室収縮機能の維持に寄与する分子としてNeuregulin-1を同定した。その遺伝子発現制御機構や下流のシグナル経路について新しい知見を得ることができた。さらに、これらの結果をまとめ、論文として発表した。現在、収縮機能の維持に寄与する分子メカニズムの解明を進めており、本研究の発展が見込まれることから、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、NRG1-ErbB2/4-Akt経路の下流シグナルについてさらなる解析を進める予定である。すでにターゲットとなるとなる候補蛋白を絞り込んでおり、心室筋細胞における作用機序を明らかにする方針である。
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Causes of Carryover |
学会の一部がオンライン開催となり旅費の支出額が減少したため、また、キャンペーンなどを活用して消耗品費の節約に努めた結果、次年度使用額が生じた。翌年度の消耗品費として使用する予定である。
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