2021 Fiscal Year Research-status Report
微細血管系としての海綿体の恒常性と異常に関する包括的解析
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21K06822
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
山田 源 和歌山県立医科大学, 先端医学研究所, 教授 (80174712)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 海綿体 / 勃起 / シヌソイド / 平滑筋 / 男性ホルモン / ED / Wnt信号 / 血管内皮 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は、海綿体の形成機構と病態解明のために、世界で初めてin vitroのexplantの培養系を樹立した。その系において実体顕微鏡を用いたliveの蛍光観察並びに、二光子顕微鏡を応用した海綿体の収縮/弛過程を解析できる(BOR2021 実績論文など)。
この様に樹立したマウス海綿体器官培養系を生かしつつ Wnt信号系が海綿体のシヌソイド形成に重要であることを今回発見した。Wnt信号系の重要因子であるベータカテニンによる活性化により 未分化海綿体間葉の増殖は、亢進する。同信号系は、申請者が雄型尿道形成過程に必須であることを既に報告していた。海綿体間葉はシヌソイドを含む血管系であり、一方で尿道近傍間葉は、細胞凝集などによって上皮管腔形成を制御する。 この結果は、海綿体にとどまらず生殖器間葉の性質全般に迫るものと考えられる。
また海綿体における男性ホルモンの作用機序として DHT(dehydrotestosterone)を産生する転換酵素遺伝子SRDの発現検討を行いつつあり 今後このような男性ホルモン系と Wntや他の信号系の統合的作用を解析する必要がある。 さらに海綿体の収縮/弛緩過程のin vitro系による解析や 現在実験系として樹立しつつある持続勃起症(プリアピズム)のモデルマウス解明も上記のプロジェクトと連関して予定している。理研および医科歯科大 佐々木教授らとの共同研究で持続勃起症のマウスを樹立した(投稿中)。同マウスの海綿体シヌソイドは 種々のストレス環境下にあると考えられ そのような海綿体についての解析を鋭意行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまで樹立していたマウス海綿体器官培養系を生かしてWnt信号系が海綿体のシヌソイド形成に重要であることを初めて発見した。Wnt信号系の重要因子であるベータカテニンによる活性化によりLef1の発現と未分化海綿体間葉の増殖は亢進する。この結果は、海綿体にとどまらず従来明らかにした尿道周辺間葉のデータと比較して生殖器間葉の性質のある種の類似性を示唆し、その性質の特徴に迫るものと考えられる。
初年度が終了した所であるが海綿体関連で国際論文を数報publishし、さらに現在投稿および投稿準備中である。 よって他の進行中の実験や結果とも合わせて当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
海綿体は、老化や各種の病態に伴い、軟骨様の組織などを発生させることが組織学的には示唆されていた。今回の実験系において、軟骨様の細胞の出現に伴いSox9遺伝子の発現上昇を確認した。これに伴って、各種制御因子の発現の変化を検索したところ、Notch信号系の重要な制御因子であるRBPJKの発現低下が老化に伴って検出された。よって、Notch信号系や今回見出した Wnt信号を介したSox9による海綿体の異所的な変化が間葉細胞の変化に繋がるか解析を行う。この様な知見から、今後はSox9陽性細胞のリニエージについて胎児期に未分化間葉細胞における制御因子の秩序ある発現、及びその撹乱が異所的な軟骨形成や 条件によっては正常陰茎骨の形成に至る可能性を考え、解析を進める。 持続勃起マウスについては、特に組織変性を受けやすい領域の違いの有無やシヌソイドにおける収縮/弛緩過程を解析する。シヌソイドへの血液の流入(その保持)過程を明確に可視化する実験系についてさらに進展を見込んでいる。
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Causes of Carryover |
研究代表者の所属等の変更(先端医学研究所教授から形成外科学講座 名誉教授 特別研究員)に伴い、新規実験室の設定を行ったため、初年度執行予定分を次年度に若干繰り越した。新規実験室で大学院生と既に実験を開始しており、現在準備中の投稿論文にそのデータを含めつつあり、順調に経過している。
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