2021 Fiscal Year Research-status Report
抗酸化リン脂質生合成における新規基盤と破綻による神経変性の解明
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21K06824
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
堀端 康博 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (80392116)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | リン脂質 / プラズマローゲン |
Outline of Annual Research Achievements |
プラズマローゲンは脳神経に豊富な抗酸化リン脂質で、酸化ストレスから神経細胞を保護するのに重要だと考えられている。これまでプラズマローゲンの生合成はペルオキシソームと小胞体に局在する酵素群によって行われるとされてきた。これに付け加え、最近研究代表者はゴルジ体に局在する酵素EPT1もプラズマローゲンの生合成に重要であることを見出した。この発見により、プラズマローゲンの脂質中間体は小胞体ーゴルジ体間で輸送されている可能性が示唆された。しかし、輸送機構の実体についてはこれまで全く明らかにされていない。令和3年度では上記の輸送に関わるタンパク質の同定を試みた。 オルガネラ間の脂質輸送は、オルガネラ同士の接触領域に局在する特異的輸送タンパク質によって行われることが広く知られている。そこで小胞体とゴルジ体の結合に関わるドメインと脂質輸送ドメインを有するタンパク質18個を候補として選定し、プラズマローゲン脂質中間体に対する輸送活性を試験内で測定した。その結果、大腸菌で発現精製した候補タンパク質Aに脂質中間体をリポソーム間で輸送する活性を見出した。以上からAが小胞体ーゴルジ体間でプラズマローゲンの脂質中間体を輸送するタンパク質の一つであると考えられた。現在、Aを欠損した細胞を樹立し、細胞内プラズマローゲンの含量や生合成能がどのように変化するかについて解析している。 ところで、ゴルジ体にはEPT1以外にもプラズマローゲンの合成に関わると推定される酵素CPT1が存在している。本研究が提唱する小胞体ーゴルジ体間の輸送の仮説をより強固にするため、CPT1を欠失した細胞由来の脂質を解析し、本酵素がプラズマローゲン生合成において果たす役割を解明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の様に、令和3年度では小胞体ーゴルジ体間で脂質中間体を輸送するタンパク質と思われる候補Aを見出すことができた。今後はAの試験管内での輸送活性だけでなく、Aを欠失した細胞を用いた脂質の解析に移行したい。 ところで、ゴルジ体にはEPT1以外にもプラズマローゲンの生合成に関わると考えられる酵素CPT1が存在している。本研究が提唱する仮説をより強くするために、CPT1がプラズマローゲンの合成において果たす役割についても解析した。この研究については得られた成果を論文に掲載することができた。以上のように本研究計画は概ね順調に進んでいると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度においては当初の研究計画通りにAを欠失した培養細胞のリン脂質を解析し、Aが果たすプラズマローゲン合成の役割の解明に取り掛かる予定である。またA以外についても研究計画当初に候補として選定しており、これらについても並行してリポソーム輸送活性を測定し、新たな輸送タンパク質を同定する。 ところで、研究計画を立てた当初、細胞内プラズマローゲンの含量が低下すると細胞は酸化ストレスに対して脆弱化するため細胞死が増加すると考えていた。ところが最近、プラズマローゲンそのものが細胞死に必須であるという、ある意味正反対の報告がなされた。この報告によると、フェロトーシスが起きる際、プラズマローゲンに含まれる高度不飽和脂肪酸が優先的に過酸化され、細胞膜が損傷されて細胞死が誘導される。つまり、プラズマローゲンの含量が低下すると、フェロトーシスによる細胞死に対しては耐性を示すということである。本研究計画の後半はプラズマローゲンの生合成と神経変性との関連を明らかにするため、上記の報告について新たに検証する必要が出てきた。そこでまずゴルジ体のプラズマローゲン合成酵素が欠失した場合、フェロトーシスによる細胞死がどのような影響を受けるのかを解明することを新たな課題とし、準備を進めている。
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Causes of Carryover |
値引き交渉により使用額が見込額よりも若干下回り、2,878円の次年度使用額が生じた。次年度使用額については、細胞培養用の試薬、抗体、遺伝子解析試薬等の消耗品など主に物品費として使用する。
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Research Products
(3 results)