2021 Fiscal Year Research-status Report
がん微小環境におけるthymosin-β4の機能解析とその応用
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21K06842
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
森田 強 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (80403195)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 真一 和歌山県立医科大学, 先端医学研究所, 教授 (00313099)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 膵癌 / 遺伝子改変マウス / がん微小環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の研究により、癌細胞の増殖・転移には周辺の間質細胞との相互作用が重要である事が明らかになってきた。特に、非常に予後不良な癌として知られる膵癌では、癌細胞と間質細胞との相互作用が、癌細胞の転移や浸潤過程と密接に関係していることが知られている。本研究で注目するthymosinβ4(Tβ4)は、癌悪性化マーカーとして良く知られる遺伝子であり、がん組織において間質細胞が産生するTβ4が、癌細胞の増殖や転移に大きな影響を与えている可能性が示唆されている。そこで本研究では、Tβ4遺伝子改変マウスと膵癌モデルマウスを用いて、膵癌組織の微小環境におけるTβ4の役割を明らかにするとともに、Tβ4を標的とした新たな癌治療法の開発を目指している。2021年度は、Tβ4遺伝子改変マウスと膵癌モデルマウスであるKPCマウスを交配することにより、Tβ4遺伝子改変マウスにおいて人為的に膵癌発症を誘導可能なTβ4-KPCマウスの作成を行った。KPCマウスでは、p53とKras遺伝子の改変に加え、これらの変異遺伝子の発現をタモキシフェン投与により制御するためにCre-ERT2遺伝子が導入されている。Kras遺伝子の変異はホモ接合体では致死であるため、ヘテロで維持しなければならない。さらに、Tβ4遺伝子の変異もメスがホモ接合体となることにより仔マウスの出産数、生存率が著しく低下するため、ヘテロ接合体での維持が望ましい。このため、p53, Kras, Cre-ERT2, Tβ4の4重の変異を持つ個体を実験可能な頭数揃えるのはかなり困難である。現在、p53, Cre-ERT2の変異をホモで持ち、Kras, Tβ4の変異をヘテロで持つ個体が複数得られているので、これらを交配することで目的の4重変異体を作成し、今後は実際に膵癌の発症や転移に与える影響を観察する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、順調に4重遺伝子改変マウスの作成が進んでいる。今後、実験に使用可能な頭数を揃えるにはもう少し時間を要するが、2022年度中には当初の予定通り発癌実験が行える状況である。よって、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、現在作成中の4重変異マウスの個体数を増やし、系統の維持と実験に使用するのに十分な数になったならば、タモキシフェンを投与することで膵癌の発症を誘導する。これを、正常なTβ4遺伝子を持つKPCマウスと比較することで、Tβ4遺伝子の変異が、膵癌の発症や転移に与える影響を詳細に解析する。また、これらに差が見受けられた場合は、膵癌組織よりRNAを抽出し、RNAシークエンスにより発現遺伝子の違いを比較することで、発癌や転移に影響を与えた原因を推察していく予定である。
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Causes of Carryover |
若干の次年度使用額が生じているが、概ね計画通り予算を使用している。次年度へ繰り越された助成金は、動物実験のための物品費の一部として使用する予定である。
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