2022 Fiscal Year Research-status Report
がん微小環境におけるthymosin-β4の機能解析とその応用
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21K06842
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
森田 強 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (80403195)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 真一 和歌山県立医科大学, 先端医学研究所, 教授 (00313099)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 膵癌 / 遺伝子改変マウス / がん微小環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌細胞の増殖・転移には免疫細胞や筋線維芽細胞などの間質細胞との相互作用が重要であることが知られている。非常に予後不良な癌として知られる膵癌では、癌の進展に伴ってこれら間質細胞の浸潤や線維化などの間質反応が強く引き起こされ、これが癌の悪性度と密接に関係していることが知られている。本研究で注目するthymosinβ4(Tβ4)は、癌細胞自身や間質細胞において高発現している遺伝子であり、癌細胞の増殖や転移に大きな影響を与えている可能性が示唆されている。本研究では、Tβ4遺伝子改変マウスと膵癌モデルマウスを用いて、膵癌組織の微小環境におけるTβ4の役割を明らかにするとともに、Tβ4を標的とした新たな癌治療法の開発を目指している。2022年度は、前年度に引き続き、Tβ4遺伝子改変マウスと膵癌自然発症マウスであるKPCマウスを交配することでTβ4遺伝子改変KPCマウスを作成し、実験に用いるのに十分な個体数を得ることができた。このマウスにタモキシフェンを腹腔内投与することで、膵臓特的な発癌を誘導した。投与後12週程度で、正常なTβ4遺伝子を持つKPCマウスは膵癌を発症し、横隔膜や肝臓への転移が確認された。また、膵癌組織では非常に強い線維化が引き起こされていた。一方で、Tβ4遺伝子遺伝子改変KPCマウスでは、膵癌の発症は見られるものの横隔膜や肝臓への転移は見られず、腫瘍のサイズや線維化の程度も比較的弱いものであった。これらのことは、Tβ4が膵癌の進展や転移を促進する因子である可能性が強く示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り遺伝子改変マウスの作成が進んでおり、2022年度には少数の個体ではあるが実際に膵癌の発症実験を行うことで、Tβ4が膵癌の進展や転移を促進する可能性を示すことができた。よって、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、まずTβ4遺伝子改変KPCマウスの個体数を十分に増やすことで膵癌誘導実験を複数回行い、2022年に得られた結果が正しいものであることを確認する。また、KPCマウスとTβ4遺伝子改変KPCマウスを免疫組織学的な手法により比較することで、膵癌微小環境における免疫細胞の浸潤や線維化などに対するTβ4の役割を詳細に解析する。さらに、これらの結果を受けて、膵癌組織に浸潤する間質細胞を用いたシングルセル遺伝子発現解析を行うことで、がん微小環境においてTβ4が間質細胞に与える影響をより詳細に解析する予定である。
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Causes of Carryover |
2022年度末に論文の投稿を行い、掲載料として30万円程度を予定していたが、実際には使用しなかったため次年度使用額が生じた。2023年度は、シングルセル遺伝子発現解析を予定しているが、当初の予定よりも余分に費用がかかる可能性が生じているので、そちらの費用に割り当てる予定である。
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