2022 Fiscal Year Research-status Report
Analyses for molecular mechanisms of dipeptidyl peptidase III-targeted peptide that deteriorates diabetic kidney disease
Project/Area Number |
21K06854
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
清水 昭男 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (30769279)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 糖尿病性腎臓病 / ペプチド / DPPIII |
Outline of Annual Research Achievements |
糖尿病性腎臓病は進行性の腎障害であり、日本における透析導入原因の第一位である。日本では推定約1,000 万人もの糖尿病患者がおり、その約40%で糖尿病性腎臓病を発症している。この研究は糖尿病性腎臓病に対する新たな治癒法の開発のために行われている。ペプチドをN 末端側より2 アミノ酸ずつ加水分解する酵素ジペプチジルペプチダーゼIII(DPPIII)は、主として、アミノ酸残基数3-10 程度の比較的小さな特定のペプチドを分解する。糖尿病では血中で様々な種類の断片化ペプチドが増加しているとの報告があるために申請者は、レプチン受容体遺伝子点変異により2型糖尿病を発症するdb/db マウスに、精製リコンビナントDPPIII を投与しその効果を検証した。DPPIII投与はコントロールの生理食塩水投与と比較して、腎機能障害の指標である尿中アルブミン量を、血糖値に変動なく有意に抑制できた。血糖低下作用のないDPPIII が、血糖非依存的に腎保護作用を発揮する機序を検討するため、糖尿病で増加し、DPPIII で分解される血中ペプチドを網羅的なペプチドーム解析で探索したところ、9 アミノ酸からなるペプチド(候補ペプチド)を見出すことができた。選択的反応モニタリング(質量分析法の一種)を用いて、正常マウス、db/db マウスそれぞれの血漿中に存在する候補ペプチドの量(濃度)を測定したところ、糖尿病時における候補ペプチド量が確かにdb/db マウスにおいて増加していることが確認できた。またDPPIII投与によって候補ペプチドが分解されることをin vitro、in vivoにおいて同定し、この候補ペプチドがアナフィラトキシン作用を有しており血管内皮細胞に対して透過性を上昇させることを現在解析している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DPPIII で分解される血中ペプチドを網羅的なペプチドーム解析で探索したところ、9 アミノ酸からなるペプチド(候補ペプチド)を見出すことができた。選択反応モニタリング(質量分析法の一種)を用いて、正常マウス、db/db マウスそれぞれの血漿中に存在する候補ペプチドの量(濃度)を測定したところ、糖尿病時における候補ペプチド量が確かにdb/db マウスにおいて増加していることが確認できた。選択反応モニタリングという新規の実験手法による定量化は、計画当初難航するかに思われたが、有意にdb/dbマウスにおいて上昇していることが比較的短期間に同定できた。またDPPIII投与によって候補ペプチドが確かに分解されることをin vitro、in vivoにおいて同定し、この候補ペプチドがアナフィラトキシン作用を有しており血管内皮細胞に対して透過性を上昇させることを現在解析している。
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Strategy for Future Research Activity |
この候補ペプチドのアミノ酸配列から、候補ペプチドは補体C3の分解産物で、腎臓内の血管にアナフィラトキシン様作用を惹起して、腎障害を引き起こすことが想定されている。現在候補ペプチドがアナフィラトキシン様作用を血管内皮細胞にもたらす分子機構を解析中である。候補ペプチドを培養血管内皮細胞に添加することによって、RhoAが活性化することを同定している。血管の透過性を亢進していることが強く示唆されている。今後の課題として、血管透過性の亢進が糖尿病性腎臓病を増悪に対して関わっていることを解明し、DPPIII がそのペプチドを分解することによって腎保護作用を発揮していることを明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
昨年度において同定した候補ペプチドが、in vitroとin vivoにおいて確かにDPPIIIによって分解することを明らかにした。また候補ペプチドが有するアナフィラトキシン作用が血管内皮細胞のRhoAを活性化し、血管透過性亢進に寄与する可能性が高いことを明らかにしつつある。しかしまだこの候補ペプチドがRhoAを活性化させるシグナルの解明という重要課題が残されているために、次年度以降においてそれらの探求のために予算を使用していく予定である。
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Research Products
(8 results)