2022 Fiscal Year Research-status Report
ALSの分子病態解明と治療法開発を目指した直鎖ユビキチンの新規特性解析
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21K06857
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
寺脇 正剛 川崎医科大学, 医学部, 講師 (60437217)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 神経変性疾患 / 神経炎症 / ユビキチン / プロテイノパチー |
Outline of Annual Research Achievements |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の神経細胞内に認められる凝集体の主要なタンパクとしてTDP-43が知られており、TDP-43の凝集が神経細胞死の原因となっていることが示唆されている。前年度までにわれわれはカルパインやカスパーゼなどにより切断されて生じるTDP-43の断片が主に細胞質内に局在し、それらがプロテアソーム系やオートファジーの標的シグナルとなるK48およびK63を介したポリユビキチン鎖のみならず、直鎖型ポリユビキチン化を受けていることを明らかにした。直鎖ユビキチン化は家族性ALS患者に認められるA315TやM337Vといった変異TDP-43においてより顕著であり、大部分が界面活性剤不溶性画分において認められた。ゲノム編集により直鎖ユビキチンを生成するE3リガーゼ複合体LUBACの活性中心であるHOIPを欠損したマウス神経芽細胞株Neuro2Aを作製し、この細胞にTDP-43を発現させたところ、野生型のNeuro2A細胞に発現させた場合と比較して有意に細胞内の凝集体が減少した。これは直鎖ユビキチン鎖がTDP-43の凝集体形成に関わっていることを強く示唆している。われわれが開発しすでに報告しているLUBACの特異的阻害剤HOIPIN-8で細胞を処理すると、濃度依存的にTDP-43の凝集体形成が抑制された。またTDP-43の凝集体形成はTNF-αで刺激したNeruo2A細胞におけるNF-κBの活性化を亢進させ、この効果もHOIPIN-8が抑制しうることがNF-κBの活性測定から明らかとなった。これらの結果はTDP-43の凝集体形成が神経細胞における炎症に関与しており、LUBACの活性阻害がTDP-43の凝集体形成や神経炎症の抑制によってALSの治療に応用できる可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目は細胞を用いたin vitroの実験系により、直鎖ユビキチンがTDP-43の凝集体形成に寄与していること、およびわれわれが開発したLUBAC阻害剤により、凝集体の形成が阻害しうることを示すことが目的であり、予定通り完遂された。細胞レベルの実験によって得られた結果は査読付きの雑誌に投稿し、すでに掲載済みである。これと並行して3年目のALSモデルマウスを用いた実験にむけて、パイロット実験を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
1~2年目の研究により、われわれの予測通りTDP-43の凝集体形成に直鎖ユビキチン化が関わっていること、細胞内におけるTDP-43の凝集体形成をLUBAC阻害剤により抑制できることが明らかとなり、ALSの根本的な治療法の開発が期待できる。3年目の研究ではALSのモデル動物である変異型TDP-43のトランスジェニックマウスを用いたin vivo実験を行う。LUBAC阻害剤をALSモデルマウスに投与し、ALSの発症の抑制、さらには発症後の余命延長や運動機能低下が抑制できるかなど、治療効果について、生化学的実験、組織染色、行動テストなどをおこない、評価する予定である。
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Research Products
(6 results)