2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K06871
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
白石 裕士 大分大学, 医学部, 准教授 (80452837)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | RNAキナーゼ / CLP1 / 橋小脳低形成症 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体内の様々なRNA分子は、厳密に合成と分解の調節を受けており、その異常が様々な疾患を引き起こす。CLP1は、RNAの5'末端をリン酸化するRNAリン酸化酵素の一つである。RNAの5'末端のリン酸化の生理的意義は未だ不明であるが、リン酸化活性を失ったCLP1を持つマウスは、異常tRNA断片が蓄積し、神経変性症状を示すことが知られており、実際に橋小脳低形成症患者において、CLP1の変異が見つかっている。本研究では、CLP1の機能不全がどのようにして神経変性を引き起こすのか明らかにすると共に、RNAリン酸化の生理的意義を明らかにすることを目的としている。 当該年度は、まず、ヒトで見つかったCLP1の変異(R140H変異)が、橋小脳低形成症の原因となっているかどうかを証明するために、CRISPR/Cas9システムを用いてヒトのCLP1変異を持つノックインマウスを作製および解析を行った。CLP1変異ノックインホモ接合体マウスは正常なメンデル比で産まれ、若齢期には目立った表現型は観察されなかった。しかしながら、成長するに従い、下肢の麻痺を伴う神経症状を示した。そこで老齢期の脳組織の組織学的解析を行ったところ、野生型マウスに比べ、大脳の運動野の神経が減少していることが明らかとなった。さらにノックインマウスの脳組織では、橋小脳低形成症患者と同様に、異常tRNA断片が蓄積していることが分かった。よってCLP1のR140H変異が橋小脳低形成症の原因となっていることが明らかとなった。また本マウスが橋小脳低形成症の良い動物モデルとなることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度に予定していた変異モデルマウスの解析を行い、CLP1のR140H変異が橋小脳低形成症の原因となっていることを明らかにして国際誌に論文を発表することができたため、概ね順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、マウスモデルを用いて病態形成メカニズムのより詳細な解析を行う。またゼブラフィッシュモデルの作製および解析を行い、治療戦略構築のための薬剤スクリーニングの系を立ち上げる。また、CLP1の生理的役割を明らかにするための生化学的実験を進めていく予定である。
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Research Products
(8 results)