2021 Fiscal Year Research-status Report
Ym1陽性単球由来マクロファージによる肝線維症の進展機序解明
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21K06877
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
浅野 謙一 東京薬科大学, 生命科学部, 准教授 (10513400)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
濱田 理人 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (20567630)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 非アルコール性脂肪肝炎 / マクロファージ / 単球 / Ym1 |
Outline of Annual Research Achievements |
非アルコール性脂肪肝炎NASHを誘導した肝臓には、血流を介して多量の単球が浸潤する。肝臓に浸潤した単球は、肝臓特異的な環境シグナルによって誘導された転写因子の働きによって、さらにNASH型マクロファージに分化する。NASH型マクロファージは、肝星細胞や線維芽細胞などの間質細胞を活性化することで肝線維化を促進する原因細胞と考えられている。 そこで、骨髄単球からNASH型マクロファージへの分化を制御する転写因子を同定することを目的として、肝臓マクロファージの遺伝子発現をRNAシークエンス解析し、NASH進展時に発現が亢進する転写因子Egr2を同定した。骨髄系免疫細胞選択的にEgr2を欠損したマウス(Egr2-cKOマウス)を作製し、そのマウスのNASHの病態を解析することで、Egr2の役割を検討した。Egr2-cKOマウス肝臓の、免疫細胞数は野生型と同程度だったが、Egr2-cKOマクロファージにおけるCD11c/CD63/CD88などの表面発現が、野生型に比べ顕著に低下していた。マクロファージの性質の変化をさらに詳細に解析するため、NASH誘導マウスの肝臓マクロファージをCD11c/CD88発現レベルの違いに基づいて分取した。CD11c/CD88二重陽性マクロファージは、Spp1, Trem2, Cd9などNASH型マクロファージのsignature遺伝子群を強発現することが分かった。CD11c/CD88陰性の肝臓マクロファージは、抗炎症性サイトカインIL-10のmRNAレベルが亢進している一方、線維化促進因子PDGFレベルが減弱していることを見出した。これらの研究により、Egr2が、浸潤単球からNASH型マクロファージへの分化に深く関与することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度の研究で、NASH誘導時のマクロファージで強発現する転写因子Egr2を同定した。さらに、Egr2-cKOマウスでは、肝臓に浸潤した単球からNASH型マクロファージへの分化が阻害されることを生体レベルで検証できたことから、単球からマクロファージへの分化を制御する転写因子を同定する、という初年度の目標はほぼ達成できたと言える。 これまで、NASH進展時の肝臓に混在する多様なマクロファージを個別に解析することが困難だった理由として、それらを識別できる表面分子が同定されていなかったことが挙げられる。この研究によりCD11c/CD63/CD88という表面マーカーを用いて、異なる肝臓マクロファージサブセットを分取、機能解析することができるようになったことから、NASHの病態形成におけるマクロファージの役割の解析に関しては、当初の目標以上の進展があったと言える。一方でYm1-CreマウスはようやくF1マウスが誕生したばかりであり、Ym1陽性単球とそれに由来するマクロファージの可視化は当初の計画よりもやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
Egr2-cKOマウスのNASHの病態を解析する。初年度は、cKOマウスの作製にLyz2-Creマウスを用いたが、Lyz2遺伝子は、骨髄単球だけでなく、肝常在マクロファージであるクッパ―細胞や、樹状細胞にも発現するため、NASHの病態形成におけるEgr2の役割を厳密に解析することができない。この問題を解決するため、最近誕生したYm1-CreマウスとEgr2-floxマウスやRosa26-LSL-Tomatoマウスを交配し、浸潤単球の分化、増殖、肝臓内局在、標的、実行分子を明らかにしていくことで、Ym1陽性単球とそれに由来するマクロファージの、NASHの病態形成における役割を解析する。 独自に見出したCD11c/CD88などの表面マーカーを用いて肝臓マクロファージを分取し、機能の違いを解析する。例えば、CD11c/CD88二重陽性マクロファージは、二重陰性マクロファージよりも、肝星細胞における線維化マーカー発現を促進する可能性などを考えている。CD11c/CD88二重陽性と二重陰性マクロファージの遺伝子発現をRNA-seq解析し、二重陽性マクロファージで強発現する、線維化促進因子を探索する。当該分子に対する中和抗体や、そのレセプターの阻害抗体を作製し、それらをNASH誘導マウスに投与することで、肝線維症の抑制効果を検討する。線維化の実行因子がタンパク質だった場合は、Ym1単球由来マクロファージ選択的に当該遺伝子を破壊したマウスを作製し、そのマウスを解析することで、線維形成における役割を解明する。
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Causes of Carryover |
Ym1-Creマウスの作製が当初の予定よりもやや遅れたため、遺伝子組み換えマウスの作製、飼育、維持、解析のために計上していた予算を執行できなかった。後ろ倒ししたすべての研究は、最近誕生したYm1-Creマウスを用いて、翌年度(2022年度)に遂行する計画である。
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