2021 Fiscal Year Research-status Report
スキルス胃癌と口唇口蓋裂の発症に関わるPLEKHA5の分子機能の解析
Project/Area Number |
21K06879
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Research Institution | Sasaki Foundation |
Principal Investigator |
山口 英樹 公益財団法人佐々木研究所, 附属研究所, 部長(移行) (10345035)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大木 理恵子 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 独立ユニット長 (70356252)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | スキルス胃癌 / 口唇口蓋裂 / PLEKHA5 / 細胞間接着 / E-cadherin |
Outline of Annual Research Achievements |
スキルス胃癌はびまん性浸潤、間質増生、腹膜播種をきたす予後不良の難治癌である。家族性スキルス胃癌はE-cadherinの変異により生じるが、変異保有者の一部は口唇口蓋裂を併発する。我々はスキルス胃癌の進展に関わる新規分子PLEKHA5を見出したが、驚くべきことにPLEKHA5が遺伝性口唇口蓋裂の原因遺伝子であることが報告された。従ってPLEKHA5は細胞間接着を制御し、その機能異常が両疾患の発症に関与すると推察された。そこで正常上皮の細胞間接着とスキルス胃癌におけるPLEKHA5の機能を解明することを目的として研究を行った。 まず間接蛍光抗体法によりPLEKHA5の細胞内局在を解析したところ、PLEKHA5はE-cadherinと共に細胞間接着部位に局在していた。Tandem affinity purification法によるPLEKHA5結合タンパク質の探索を行った結果、PLEKHA5はアドヘレンスジャンクションやデスモソームに関連する多くのタンパク質と結合することが明らかになった。従って、正常上皮においてPLEKHA5は細胞間接着を制御する可能性が示唆された。今後はCRISPR-Cas9によりPLEKHA5のノックアウト細胞を作製し、細胞間接着への影響や、遺伝性口唇口蓋裂の家系で見つかったPLEKHA5変異の機能解析を進めていく。 一方、スキルス胃がん細胞においては、PLEKHA5が細胞内小胞、特にリサイクリングエンドソームと考えられる構造に局在していた。また膜輸送に関わる低分子量Gタンパク質であるArf6と共局在する様子が確認された。従って、細胞間接着が喪失したスキルス胃がん細胞においては、PLEKHA5が細胞内小胞輸送に関与する可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PLEKHA5の細胞内局在を明らかにし、結合タンパク質を多数同定することに成功した点を踏まえると、当初の実験計画に沿って、比較的順調に研究が進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、実験計画に従い研究を進めていく。正常上皮とスキルス胃がん細胞におけるPLEKHA5の機能を詳細に解析し、細胞間接着とがん悪性化におけるPLEKHA5の役割を明らかにしていく。また動物モデルを用いた実験に着手し、個体レベルでの機能解析も進めていく。
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Causes of Carryover |
低価格での物品購入に努め、既存の物品を利用するなどした。また一部の実験を次年度に持ち越した。さらにコロナ渦により出張旅費などの支出がほぼ無かった。以上の理由により次年度使用額が生じた。次年度は繰り越し分を有効に活用し、積極的に学会参加や共同研究などを進めていく予定である。
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