2021 Fiscal Year Research-status Report
治療標的となりうる腫瘍幹細胞の可塑性を制御する因子の解析
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21K06881
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
池田 純一郎 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (20379176)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 腫瘍幹細胞 / 可塑性 / アルデヒド脱水素酵素 / 子宮内膜癌 / 病理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
腫瘍には腫瘍幹細胞とよばれる化学療法や放射線療法に抵抗性で再発や転移の原因となる一群の小集団が存在するとされており、癌治療を考えるうえで重要な要因となっている。これまで腫瘍幹細胞は自分自身を複製すると同時に非腫瘍幹細胞を産生するが、非腫瘍幹細胞からは腫瘍幹細胞は生み出されないとされてきた。しかし近年、非腫瘍幹細胞からも腫瘍幹細胞が形成されるという「可塑性」がみられることがわかり、この可塑性を制御することが悪性腫瘍の治療において重要な要因になると考えられる。そこで、我々は様々な腫瘍における腫瘍幹細胞の可塑性を検討し、それを制御する因子を同定することを計画した。子宮内膜癌の腫瘍細胞株を用いて,腫瘍幹細胞のマーカーとされているアルデヒド脱水素酵素(ALDH)をターゲットとして可塑性を惹起しやすい状態とそうでない状態の細胞を採取し、そこからRNAを抽出してRNA-seq解析を行った。その結果、可塑性を惹起しやすい状態で発現の高い遺伝子と可塑性を来たさずにより分化する方向へ向かう場合に発現の高い遺伝子について複数の候補となるものが得られた。可塑性を惹起しやすい状態で発現の高い、神経発生に関与するglycoprotein M6B (GPM6B)についてCRIPR/Cas9 systemを用いて、子宮内膜癌の細胞株でGPM6Bをノックアウトすると、ALDH1A1のタンパク発現が低下し、sphere形成が小型化する傾向が認められた。プロゲステロン受容体陰性の症例ではALDH1A1の発現が高くGPM6Bが腫瘍形成能に寄与する可能性が考えられたが、プロゲステロン受容体を発現させると腫瘍形成能が低下することがわかった。これによりGPM6Bが腫瘍幹細胞マーカーであるALDHと協同して腫瘍形成に関与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
子宮内膜癌の細胞株でGPM6Bをノックアウトすることにより、ALDH1A1のタンパク発現が低下し、sphere形成が小型化する傾向が認められ、プロゲステロン受容体陰性の症例ではALDH1A1の発現が高くGPM6Bが腫瘍形成能に関与する可能性が考えられたが、プロゲステロン受容体を発現させると腫瘍形成能が低下することがわかった。これによりGPM6BがALDHと協同して腫瘍形成に関与している可能性が考えられ、概ね順調に検討が進んでいるものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は腫瘍幹細胞の可塑性を制御する因子の同定にむけて、GPM6BとALDH、またプロゲステロン受容体との関係性について詳細な検討を加えていく。同時に他の可塑性制御因子の候補となるものを分子レベルで検討していく。
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Causes of Carryover |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行する予定であったが、研究室で一定量所有していた物品等を使用し、また学会もオンデマンドや近隣地での開催であったため、当初の見込み額と執行額は異なった。 研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め当初予定通りに計画を進めていく。具体的には、消耗品、情報収集あるいは成果発表のための国内旅費、複写費、研究成果発表費用(投稿料)に用いる予定である。
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Research Products
(19 results)