2022 Fiscal Year Annual Research Report
胃癌発生の初期段階に検出される正常胃粘膜の遺伝子・遺伝子発現異常
Project/Area Number |
21K06904
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
大上 直秀 広島大学, 医系科学研究科(医), 教授 (60346484)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 胃癌 / 癌幹細胞 / PD-L1 |
Outline of Annual Research Achievements |
進行胃癌のうち低分化腺癌は未だに予後不良の疾患であり、新規診断マーカー・治療標的の同定が急務となっている。本研究の目的は、RHOA、CDH1の変異により特異的に発現が誘導される遺伝子を同定し、胃癌の病態解明を通して新規診断マーカー・治療開発に資することである。TDO2が胃癌の進行に重要な役割を担っていることが知られている。本研究では、胃癌におけるTDO2の発現と、炎症細胞浸潤、PD-L1の発現について検討を行った。 TDO2は胃癌において高発現しており、公共データベースによる検討では、TDO2高発現例は有意に予後不良であった。また、TDO2の発現はリンパ球浸潤、PD-1L1の発現と相関する傾向にあった。 胃癌細胞株を材料にTDO2の発現をRNAiでノックダウンし、各種機能解析を行った。TDO2をノックダウンすると、細胞増殖能、コロニー形成能、浸潤能が抑制された。さらにTDO2のノックダウンにより、スフェロイドの形成能が低下し、オルガノイドの形成能も阻害された。 以上の結果から、胃癌においてTDO2は癌細胞の進展に寄与し、予後不良に関わっていることが示唆された。TDO2陽性例はPD-1L1も陽性であることから、TDO2陽性例に対しては抗PD-L2抗体が有効な治療薬となる可能性が高い。TDO2は食道扁平上皮癌、膀胱尿路上皮癌、腎臓腎細胞癌においても高発現しており、癌幹細胞との関連が報告されている。胃癌においてもTDO2阻害によりスフェロイド形成やオルガノイド形成が阻害されたことから、TDO2は胃癌幹細胞の維持に重要な役割を担っていると考えられ、癌幹細胞に対する治療標的としても有用である。
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