2021 Fiscal Year Research-status Report
動脈硬化・黄色腫病変におけるマスト細胞の関与機構の解明
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21K06909
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
片岡 竜貴 岩手医科大学, 医学部, 教授 (20343254)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | マスト細胞 / マクロファージ / 泡沫細胞 / 動脈硬化 / 皮膚黄色腫 / 胆嚢コレステロールポリープ |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、マスト細胞の非アレルギー疾患への関与が注目されている。その1つが代謝性疾患への関与である。例えば、動脈硬化・皮膚黄色腫の病変は泡沫細胞集簇が特徴であるが、その周辺にマスト細胞が多くみられるという観察より、マスト細胞がこれらの疾患の進行を促進するないしは病変の形成に関わるとするものである。しかしながら、マスト細胞が泡沫細胞集簇にどのような分子機構を持って関与するかを説明しうる研究は皆無であった。 ヒト病理検体を用いた研究で、我々は動脈硬化では、病変を形成する泡沫細胞集簇巣の周辺にマスト細胞は散在するが、皮膚黄色腫および胆嚢コレステロールポリープでは泡沫細胞集簇巣を取り囲むように接してマスト細胞が存在することを見出した。これはマスト細胞の関与の機構が、動脈硬化と皮膚黄色腫・胆嚢コレステロールポリープでは異なっており、後者では接着分子の関与が疑われることを示すと考えられた。 さらに、我々は泡沫細胞に分化しうるヒトマクロファージ細胞株THP-1およびヒトマスト細胞株LUVAを用いてin vitroで実験を行った。その結果、THP-1とLUVAが接着しにくい平底の培養ディッシュでの共培養に比較して、細胞同士が接着しやすいV字型培養ディッシュでの共培養ではTHP-1のLDL・酸化LDLの取り込みおよび形態的な泡沫細胞分化が促進されることも見出した。また、THP-1のみの培養では細胞集塊は形成されないが、LUVA添加で集塊が形成されること、集塊の形成数・大きさが平底での共培養に比較して、V字型での共培養で増大することも見出した。これらの実験も、マスト細胞によるマクロファージの泡沫細胞分化促進に接着分子が関わる子を示唆していると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたヒト病理検体におけるRNA in situ hybridizationによる検索やin vitro実験での共培養細胞のサイトカイン産生などの評価は為されなかったが、泡沫細胞集簇が病変の主体である代謝性疾患群をマスト細胞の分布によって大別できることは想定していなかったが、これら疾患へのマスト細胞関与機構を明らかにするに当たって重要な知見と考えられた。in vitroの実験でも、この観察に関係すると推測される結果が得られ、今後の研究を進める方針が新たに示されたと考えられた。 総合的に、本研究はおおむね順調に進展していると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
我々は、今年度の研究でマスト細胞とマクロファージの接着が、マスト細胞の代謝性疾患への関与に重要であるという知見を得た。予備実験では、ヒトマスト細胞とマクロファージの共培養で培養液中のIL-6濃度が上昇し、それに依存したマクロファージの泡沫細胞化を促進することを見出していたが、IL-6がICAMやVCAMなどの接着分子の発現を上昇させることも良く知られている。 次年度以降、まずin vitroでICAMやVCAMなどの接着分子の中和抗体の投与がマスト細胞とマクロファージの相互作用にどのような影響を与えるかを評価する。最も影響を与える接着分子が重要な役割を果たしていると考えられ、この接着分子のヒト病理検体での発現・IL-6で発現上昇が確認されるか・この下流のシグナル伝達への影響などに着目し、研究を進行させる予定である。
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Causes of Carryover |
試薬類の価格改正などで誤差が生じたため。 次年度の試薬類購入に適正に用いる。
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Research Products
(13 results)