2021 Fiscal Year Research-status Report
臨床診断に至る前の初期心アミロイドーシス:診断率向上を目指した臨床病理学的検討
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21K06913
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
吉澤 佐恵子 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (40581707)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 心アミロイドーシス / ATTR-wtアミロイドーシス / 剖検 / 心筋生検 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、本邦におけるATTRwt心アミロイドーシスの頻度を明らかにし、心不全発症前の早期病変の特徴と進行様式を解明することである。対象は、当院に通院または入院したのち死亡し、当教室にて病理解剖が施行された50歳以上の症例である。当初の研究計画では、2000年1月から2018年10月の間に剖検が行われた患者を対象としていたが、当院IRBの承認を得て計画変更を行い、剖検施行期間を2020年12月までに延長した。その結果、約30名対象が追加となった。 ATTR心アミロイドーシスの頻度に関しては、80代~90代の剖検例の大部分で解析を終えており、ATTRアミロイド陽性率は約13%(80代)、約50%(90代)であった。R3年度は、特に70代約100剖検例の組織学的評価を進め、現在も検討中ではあるが、概ね10%程度の陽性率と予想される。また、沈着様式については、約6割の症例に血管壁への沈着が認められ、多くの症例で心室壁全体の血管に沈着が観察された。一方、心筋間質への沈着病変は、特に心内膜側~中層優位の分布を示すケースが多いことが明らかとなった。 また、微小かつ局所的な沈着しかみられない初期病変は、臨床医による生前診断率が低いのみならず、剖検診断の際に見逃されている症例が予想以上に多く存在した。ATTR心アミロイドーシスは、適切な診断が行われれば治療介入が可能である。早期かつ適切な診断のためには、臨床医・病理医双方への啓蒙活動が今後の重要課題であることを、本研究を通して改めて認識している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大幅な遅れはなく、ほぼ予定通りに進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、60代の症例を中心にATTRアミロイド沈着陽性率を明らかにするとともに、初期病変の病理学的特徴と進展様式、臨床背景、組織所見について検証していく。また、心筋生検施行症例の中で、臨床的に予見しなかったアミロイド沈着がみられた症例の解析についても、特にどのような症例が見逃されやすいかに着目して検証していく。
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Causes of Carryover |
研究に必要な物品に関して、当初計画よりも経費の節約ができたため、次年度使用額が生じた。
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