2022 Fiscal Year Research-status Report
オルガノイド樹立による大腸粘液癌の病態解明と治療標的の同定
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21K06924
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
赤木 智徳 大分大学, 医学部, 助教 (80572007)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塚本 善之 大分大学, 医学部, 助教 (00433053)
猪股 雅史 大分大学, 医学部, 教授 (60315330)
泥谷 直樹 大分大学, 医学部, 准教授 (80305036)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 大腸粘液癌 / オルガノイド / DUSP4 |
Outline of Annual Research Achievements |
私たちはこれまで、通常の大腸腺癌ではDUSP4の発現が表層部のがん細胞で亢進し、浸潤部のがん細胞では低下していることを見出した。また、DUSP4低発現細胞株にDUSP4を強制発現すると、MAPキナーゼパスウェイの不活化に伴って増殖および浸潤が有意に抑制されることを示し、DUSP4が大腸がん細胞の増殖・浸潤に関わるがん抑制遺伝子であると報告した。 一方、大腸腺癌の亜型である大腸粘液癌では、多くの症例で表層部から浸潤部に至るすべての粘液癌細胞でDUSP4の発現亢進が観察され、通常の大腸腺癌における機能とは異なることが示唆された。また、DUSP4を高発現する大腸細胞株も少数ながら存在しており、それらにおいてはDUSP4の発現レベルをRNAiで抑制すると、p53の蓄積と、p53下流のシグナルパスウェイが活性化され、細胞周期の停止とアポトーシスの誘導に伴って細胞増殖能が有意に低下することを見出している。 これらの知見は、大腸癌の一部、とくに大腸粘液癌においては、恒常的に発現するDUSP4ががん細胞の生存能と増殖能を亢進して、がん遺伝子として機能していることを示唆している。さらに、大腸癌に対する新規分子標的としてのDUSP4の有望性についても期待される。本研究では、大腸粘液癌の組織培養系を確立することにより、粘液癌で高発現しているDUSP4の機能的意義を明らかにする。さらに、粘液癌で活性化しているシグナルパスウェイを同定して、治療標的としての可能性を検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は昨年度に樹立成功した4例の大腸粘液癌オルガノイドについて、培養細胞の形態的観察と免疫不全マウス移植モデル作成を施行した。4例中1例は、培養細胞および移植腫瘍の形態観察にて、粘液癌の特徴(粘液産生や粘液湖の形成)を呈しており、粘液癌オルガノイドの成功と結論付けた。しかし残り3例については、粘液癌ではなく通常型大腸腺癌と同様の組織像を示していた。おそらく手術組織からのサンプル採取の際に粘液癌の部分を外していたと考えられる。 現在、樹立できた1例についてDUSP4 mRNAおよびDUSP4タンパクの発現レベルの解析や、各種の機能解析(増殖能、浸潤能、生存能など)、免疫不全マウスへの移植・治療実験を施行しているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、3例の粘液癌オルガノイドの樹立を達成する。数がそろったところで以下の実験を施行する。 [ DUSP4の機能解析 ] siRNAを用いたノックダウン法でDUSP4発現を抑制して、増殖能(MTS法)や浸潤能(Boyden chamber法)、生存能(アポトーシス解析)、細胞周期(FACS解析)への影響を調べる。 [ 重要なシグナルパスウェイの同定と治療応用 ] 粘液癌および正常上皮由来のオルガノイドからRNAを抽出して、網羅的発現解析を行う。粘液癌で発現変動する遺伝子群を抽出し、それらをパスウェイ解析データベース(Ingenuity Pathway Analysis, Ingenuity Systems)に連携して、粘液癌特異的に活性化しているシグナルパスウェイの概要を得る。さらに、オルガノイドのタンパク液を抽出して、リン酸化タンパクアレイを用いて活性化シグナルパスウェイを確認する。活性化シグナルパスウェイを構成する分子の中から、特異的阻害剤が存在し標的分子となりうる分子を選択する。免疫不全マウス移植モデルを作成して、移植したオルガノイドが生着後、阻害剤を投与(経口、腹腔)して、腫瘤の縮小効果や遠隔臓器(肝、肺、脳など)への転移抑制効果、生存期間の延長効果などを調べる。
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Causes of Carryover |
解析対象となる粘液癌症例が当初の予定よりも少なかったことに加えて、樹立に成功したオルガノイドが1例しかなかったので、樹立後の培養関連器具および解析用試薬・マウス等の購入費が少額になった。高額の研究費を要する全ゲノムシークエンス解析実験や、網羅的発現解析実験棟は次年度に見送る。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Success rate of acquiring informed consent and barriers to participation in a randomized controlled trial of laparoscopic versus open surgery for non-curative stage IV colon cancer in Japan (JCOG1107)2022
Author(s)
Akagi T, Suzuki K, Kono Y, Ninomiya S, Shibata T, Ueda Y, Shiroshita H, Etoh T, Shiomi A, Ito M, Watanabe J, Murata K, Hirano Y, Shimomura M, Tsukamoto S, Kanemitsu Y, Inomata M; Colorectal Cancer Study Group of Japan Clinical Oncology Group.
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Journal Title
Jpn J Clin Oncol
Volume: 52
Pages: 1270-1275
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Laparoscopic versus open resection for stage II/III rectal cancer in obese patients: A multicenter propensity score-based analysis of short- and long-term outcomes2022
Author(s)
Akagi T, Nakajima K, Hirano Y, Abe T, Inada R, Kono Y, Shiroshita H, Ohyama T, Inomata M, Yamamoto S, Naitoh T, Sakai Y, Watanabe M; Japan Society of Laparoscopic Colorectal Surgery.
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Journal Title
Ann Gastroenterol Surg
Volume: 7
Pages: 71-80
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] 困難症例に対する大腸癌手術:手技の工夫と成績 症状を伴う治癒切除不能大腸癌に対する腹腔鏡の有用性に関する多施設共同ランダム化比較第3相試験 JCOG1107試験の主たる解析結果2022
Author(s)
赤木 智徳, 猪股 雅史, 塩見 明生, 伊藤 雅昭, 渡邉 純, 村田 幸平, 平能 康充, 下村 学, 大塚 幸喜, 瀧井 康公, 岡村 修, 西村 淳, 塚本 俊輔, 金光 幸秀
Organizer
第35回日本内視鏡外科学会総会