2021 Fiscal Year Research-status Report
免疫受容体CD96によるγδT細胞の活性化機構の解明
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21K06943
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
林 杏子 (大岡杏子) 筑波大学, 医学医療系, 特別研究員(RPD) (50569019)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 免疫受容体 / γδT / 乾癬 |
Outline of Annual Research Achievements |
免疫受容体CD96は、NK細胞やCD8T細胞の活性化を抑制するチェックポイント受容体として注目されている。CD96は、NK細胞と同様、γδT細胞にも強く発現しているが、γδT細胞におけるCD96の機能については全く明らかになっていない。申請者は、前年度までに、WTマウスとCD96欠損マウスにイミキモド誘発乾癬を誘導し、CD96が、γδT細胞からのIL-17産生を促進する事で病態を増悪している事を明らかにした。この結果は、CD96が乾癬治療の標的となりうる可能性を示唆するものである。治療開発を目指す上でCD96の詳細なシグナル伝達経路を明らかにする事は、基礎的、臨床的に極めて重要な意義を持つ。 今年度は、以下の2点について研究を行った。 (I) 乾癬モデルマウスにおけるγδT細胞以外の細胞のCD96の関与の有無 CD96は様々なリンパ球系の細胞に発現しているが、γδT細胞上のCD96が乾癬様病態の増悪に影響している事を明らかにした。 (II) マウスγδT細胞におけるCD96の活性化シグナル伝達経路の解明 γδT細胞がIL-17を産生するためには、TCRシグナルやIL-23やIL-1βなどのサイトカインによるシグナルの活性化が必要である。マウスの皮膚から単離したγδT細胞の培養系を確立し、CD96がγδT細胞のどのシグナル経路を活性化し、IL-17産生を誘導しているかin vitroで明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、以下の2点について研究を行った。 (I) 乾癬モデルマウスにおけるγδT細胞以外の細胞のCD96の関与の有無 イミキモド誘発乾癬モデルを用いて、乾癬病態の増悪にγδT細胞以外の細胞のCD96が関与しているか否か確認するため、当初、TCRδ欠損マウス、TCRδ-CD96ダブル欠損マウスの背部に乾癬を誘導し、病態の観察を行う予定であったが、マウスの搬入の都合で行えなかった。γδT細胞上のCD96が乾癬病態の増悪に関与しているか否か明らかにするため、Rag1欠損マウスの背部にWTマウス、あるいはCD96欠損マウスの脾臓から単離したγδT細胞を移入し乾癬を誘導したところ、PBS投与群と比較し、WTマウスから単離したγδT細胞を移入したマウスで乾癬様病態が増悪し、CD96欠損マウスから単離したγδT細胞を移入したマウスで乾癬病態が軽減した。この結果から、γδT細胞上のCD96が乾癬病態の増悪に関与している事を示した。 (II) マウスγδT細胞におけるCD96の活性化シグナル伝達経路の解明 WTマウスの皮膚から単離したγδT細胞をin vitroでCD3抗体、CD96抗体、IL-23で刺激し、IL-17の産生量の解析を行った。CD96抗体刺激は、TCR刺激下で、IL-23刺激によるIL-17産生量を促進した。また、この時、γδT細胞のERKのリン酸化の亢進、T細胞活性化マーカーの発現上昇が見られ、CD96がγδT細胞のTCRシグナルを活性化している事を示した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果から、抗CD96中和抗体は、γδT細胞膜上のCD96に結合し、CD96のシグナル伝達経路を阻害する事で乾癬病態を抑制する新しい治療薬となりうる可能性がある。 今後は、以下2つの点について研究を推進する。 (I) 抗CD96中和抗体を用いた乾癬モデルマウスに対する予防、治療効果の検討 マウスにCD96の中和抗体を投与する事でイミキモド誘発乾癬モデルマウスの病態を軽減できるか否か解析する。マウス個体に投与可能なCD96中和抗体はないため、申請者は、これまでに、マウスCD96のFc融合タンパク質をCD96欠損マウスに免疫する事で、リガンドであるCD155との結合を阻害できる中和抗体を得ている。この抗CD96中和抗体を、乾癬の誘導前、あるいは誘導後に投与し、病態の解析を行う。予防効果、治療効果が見られた際には、既存薬であるIL-17抗体投与群、TNF抗体投与群との比較を行う。また、既存薬とCD96抗体を同時投与する事で、相加効果が見られるか検討する。 (II) ヒトγδT細胞におけるCD96の機能の解明 申請者は、健常人から採取した末梢血単核細胞 (PBMC) 中のγδT細胞がCD96を発現し、マウスγδT細胞と同様に、TCR刺激下でCD96抗体で刺激した際に、IL-17産生が増加する事を示している。今後は、筑波大学医学医療系皮膚科の協力を得て、乾癬患者のPBMCを用いた解析を行う。健常人と比較して、乾癬患者のγδT細胞上のCD96の発現が高い、IL-23刺激によるγδT細胞からのIL-17の産生量が、TCR刺激下でCD96抗体で刺激した際に、健常人のγδT細胞と比べて感受性が高い可能性を考え、解析する。ヒトCD96が、マウスCD96と同様、γδT細胞を活性化する事で病態の悪化に寄与している事を示せば、CD96が乾癬の新たな治療の標的となりうる事を強く示唆できる。
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Research Products
(3 results)