2021 Fiscal Year Research-status Report
難治性神経疾患の克服を目指した神経系血管バリアーの人為的制御手法の確立
Project/Area Number |
21K06949
|
Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
池田 栄二 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (30232177)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
崔 丹 山口大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (40346549)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 血液脳関門 / Basigin / 低酸素 / 炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経系血管バリアーの神経疾患治療への関与は、1)バリアーが‘開いた状態’になり組織微小環境が攪乱されてしまうことが、疾患を難治なものとしている多くの神経疾患が存在すること、2)‘閉じた状態’にあるバリアーが、薬剤の神経組織実質への到達を妨げ創薬の厚い壁となることが挙げられる。したがって、神経系血管バリアーを人為的に制御(‘閉じた状態’⇔‘開いた状態’)する手法が確立されれば、神経疾患の治療に革新がもたらされ、多くの疾患の難治性克服が期待される。 我々は、神経系血管バリアーの人為的制御のための標的として、バリアー形成血管内皮細胞の細胞膜に発現局在する糖タンパク質Basiginを特定し、Basigin阻害により病的に‘開いた状態’のバリアーを‘閉じた状態’に、Basigin刺激により‘閉じた状態’のバリアーを‘開いた状態’にできることを見出し報告した。さらに副反応を最小限に抑えた臨床応用に向け標的の絞り込みを進めた結果、高マンノース型糖鎖修飾を受けたBasiginのみを特異的標的として阻害することにより、少なくとも低酸素刺激下でバリアーが‘開いた状態’になる現象は予防できることを見出している。これらの知見に基づき2021年度は、複数の病的刺激が混在しているヒト神経疾患への臨床応用を視野に入れ、低酸素以外の刺激〔TNFα(炎症刺激)、Cyclophilin A(Basiginのligand)など〕を用いた実験系にて解析を行った。その結果、高マンノース型糖鎖修飾Basiginは、様々な刺激によりバリアーが開く現象に共通必須因子として関与することが示され、実際に糖尿病網膜症モデルマウスにおいて‘開いた状態’のバリアーを、高マンノース型糖鎖修飾Basiginを特異的標的とすることにより人為的に‘閉じた状態’に修復できることを示すデータが得られ、臨床応用への第一歩と考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
‘開いた状態’の神経系血管バリアーを人為的に‘閉じた状態’にするための手法については、副反応を最小限に抑えるための標的分子の絞り込みに成功しており、創薬へ向け順調に研究成果が得られていると考えている。‘閉じた状態’の神経系血管バリアーを人為的に‘開いた状態’にして薬剤を神経組織実質に送達させる手法については、臨床応用へ向け、転移性脳腫瘍(肺癌、乳癌を予定)に対する有用性評価を計画しているが、その進捗に若干遅れはみられる。研究全体としては、おおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
‘開いた状態’の神経系血管バリアーを人為的に‘閉じた状態’にするための手法については、現時点では高マンノース型糖鎖修飾Basiginを特異的に阻害するために酵素を用いているが、創薬に向けて他のモダリティ、特に抗体を作製する方向に進めていく予定である。‘閉じた状態’の神経系血管バリアーを人為的に‘開いた状態’にして薬剤を神経組織実質に送達させる手法については、Cyclophilin A の作用機構の詳細を解析しプロトコールの最適化を検討する。同時に、肺癌細胞および乳癌細胞を標識し免疫不全マウス脳内に移植しモニターする in vivo 系を構築し、Cyclophilin A 投与によりバリアーを開き抗がん剤を神経組織実質に送達させ治療効果を評価する予定である。
|
Research Products
(1 results)