2021 Fiscal Year Research-status Report
Acquisition mechanism of brain-specific properties for regulatory T cells in central nervous system diseases
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21K06951
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山本 伸一 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任助教 (10634800)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | Treg / 脳 / アストロサイト / ミクログリア |
Outline of Annual Research Achievements |
制御性T細胞(Treg)は、中枢神経系、皮膚、消化管、内臓脂肪組織などの非リンパ組織の恒常性と再生を促進することにより、組織耐性維持に不可欠な機能を果たすことが示されている。そして、これらの非リンパ組織Tregは、炎症性サイトカインIL-18やIL-33などの因子を介して、その場で組織損傷を感知することにより、TCRシグナル伝達とは無関係に組織修復を促進すると考えられている。さらに近年ではアルツハイマー病やパーキンソン病をはじめとする様々な神経疾患と免疫系の関連性が報告されており、中枢神経系疾患における免疫系との関与が明らかになりつつあるが、不明な点が多く残されている。本研究の目的は、脳炎症後に脳内浸潤する脳Tregが、脳環境に応じて脳特異的遺伝子発現の獲得メカニズムを解明し、脳内炎症性疾患の制御と脳組織修復を促すことである。そこで本研究では、まず脾臓やリンパ節のTregをグリア細胞(アストロサイトまたはミクログリア)との共培養系を確立した。そして、脳損傷後に脳内に浸潤するTregは、組織Tregに共通する遺伝子(Il1rl1(IL-33受容体)など)に加え、脳Treg特異的遺伝子(HTR7(セロトニン受容体)など)を発現することから、これらの誘導共培養条件における解析を行なった。その結果、Tregとアストロサイトとの共培養における生理活性因子として、IL-33とセロトニンを加えることで組織Treg共通遺伝子(Il1rl1など)や関連タンパク質の発現(ST2(IL-33受容体)など)が上昇し、脳Treg特異的マーカーであるTHR7の誘導を見出した。しかしながら、完全な脳Tregとしての誘導および脳内炎症制御機能を明らかにするには、詳細な解析が必要とされる。この研究によって、脳梗塞、脊髄損傷あるいは多発性硬化症の増悪化のTregによる制御方法の理解が進むことが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脳Treg誘導メカニズムを解明するために、まずTregと初代培養アストロサイトおよびミクログリアとの共培養系を確立した。Tregは脾臓やリンパ節から取り出し、アストロサイトおよびミクログリアは、マウス新生仔脳から初代分離培養した。次に、様々な生理活性因子でアストロサイトまたはミクログリアと共培養すると、特にアストロサイトとの共培養におけるIL-2、IL-4、IL-33、BDFN、AregおよびセロトニンでTregの顕著な活性化が見られた。さらにTregの細胞増殖において解析を行なってみると、アストロサイトとの共培養では、IL-33またはセロトニンを加えることで増殖が見られ、組織Tregに共通する遺伝子としてST2の発現を調べてみると、IL-4によって誘導されてくることが明らかとなった。次に、これらの単独因子を混合した条件下で共培養を行なった。その結果、アストロサイトとの共培養では、IL-2、 IL-33、セロトニンとの組み合わせでは、Tregの増殖活性が見られ、ST2をはじめとする組織Tregマーカーや脳Treg特異的マーカーであるHTR7が誘導される傾向が見られた。一方でミクログリアでは、Tregの増殖活性やHTR7の発現はされるが、ST2の発現傾向は見られなかった。さらに、これらのアストロサイトとの培養条件下において詳細に調べるために、組織Tregのマーカーをタンパクレベルで解析してみると、ST2、KLRG1およびCCR8において発現が見られた。次に組織Tregおよび脳Tregのマーカーとして遺伝子レベルで解析を行なった結果、GATA3、Pparg、Il1rl1、KLRG1、Ccr8、Htr7、PenkおよびEdnrbで、その発現レンベルが上昇していた。これらの結果から、完全な脳Tregへの誘導は見られなかったが、抹消Tregとは異なる性質を持っていることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、脳特異的Tregの誘導機構を解明することで、新しい中枢神経系炎症性疾患の治療・予防法の確立を目指す。そのために、まずは今後の推進方策として以下の諸点を遂行する。そして、これらを遂行することで、慢性炎症期の脳Treg分化誘導機構が明らかとなり、脳Tregによる組織修復を促進する新たな脳内炎症性疾患の制御法における開発が期待できる。 (1)脳Treg誘導メカニズムの解明:本諸点においては、現在までに明らかになりつつあるが、脳Treg誘導に関する詳細な解析が必要とされる。具体的には、トランスウェルまたは細胞上清を用いて細胞間相互作用の必要性を検討し、推定される誘導因子に対する抗体や阻害剤を用いて、脳Tregの誘導効果が抑制されるかどうかを確認する。さらに誘導因子によって誘導したin vitroの脳TregをRNAseq解析で、実際に脳Tregに近い特徴を有するかを検討する。 (2)脳Treg誘導因子やin vitro誘導脳Tregによるin vivoでの脳内炎症制御:(1)で同定した誘導因子や発現を高める薬剤を脳内投与することによって、脳内炎症性疾患後の組織修復意義についての検証を行う。また、誘導因子欠損マウスや阻害剤を用いて、脳Tregの誘導が抑制されるかどうかも確認し、脳梗塞だけでなくEAEやアルツハイマー病モデルなどで共通性を検証する。さらに、in vitroで作製した脳Tregを脳梗塞やEAE、アルツハイマー病モデルなどの病態モデルに移入することによって、in vivoでの脳内炎症制御や組織修復促進、神経症状改善効果を検討する。
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Research Products
(2 results)