2023 Fiscal Year Research-status Report
CBPシグナル経路阻害による肝線維症からの離脱及び肝細胞機能再生機序の解明
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21K06981
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
小原 道法 公益財団法人東京都医学総合研究所, 疾患制御研究分野, 特任研究員 (10250218)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | β-catenin/CBP選択的阻害剤 / NASH / HCV-Tg |
Outline of Annual Research Achievements |
[目的] β-catenin/CBP選択的阻害剤PRI-724はHCVおよびHBVに起因する肝硬変患者を対象とした医師主導治験が進んでおり、新たな肝硬変治療薬として期待されている。非アルコール性脂肪肝炎 (NASH) は肝硬変、肝細胞がんへと進行する病態であり、患者数は日本のみならず世界で増加しているが、有効な薬物治療法は存在しておらず早急な対策が望まれている。肝線維化はNASHの予後を決定する因子であるが、肝線維症/肝硬変に対する治療薬は存在していない。本研究では、Wnt/β-カテニン/CBPシグナル阻害剤であるPRI-724の肝硬変治療効果についてその作用機序の解明を目指した。 [方法] C57BL/6Jマウスにコリン欠乏・メチオニン減量高脂肪飼料 (CDAHFD) を14週間給餌することで、肝線維化を伴ったNASHマウスを作製した。NASHモデルマウスにPRI-724を6週間投与後、肝病態への影響を検討した。肝線維化はsirius red染色および鍍銀染色で、肝機能はプロトロンビン時間で評価した。肝臓内の各種遺伝子の発現は定量RT-PCRを用いて測定した。さらに肝臓内リンパ球を分離後、FACSおよびシングルセルRNA-seqを用いて解析を行った。 [結果および考察] PRI-724が示す抗肝線維症活性については、肝線維の減少効果と肝細胞の正常化効果の両面から解析した。さらに肝線維化の分解に寄与するMmp9を産生するマクロファージに着目して解析を進めたところ、非炎症性のマクロファージである卵黄嚢由来のクッパー細胞 (KC) で強い発現が認められた。さらにPRI-724投与によって、Marco陽性のMmp9+Cd68+ KCが増加し、またMarco+Cd68+ KCでのMmp9発現量はMarco-Cd68+ KCと比べて約4倍高いことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PRI-724を投与した時に肝臓中に増加するマクロファージ・単球および好中球の一部が線維分解酵素産生を担うと考えられ、誘導機序の解析を行った。この成果は既に論文として(Yamaji, K. et al. Biom.Pharm. 2023)発表したためにこのように判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
NASHマウスで同定したCd68+Macro+クッパー細胞におけるMMP9の発現亢進をタンパク質レベルで確認するとともに、Cd68+Marco+ MMP9+クッパー細胞が肝線維化軽減に直接寄与しているか否かを検証するために、抗MARCO中和抗体や肝臓標的siRNAなどを用いてCd68+Marco+ MMP9+クッパー細胞の機能抑制や排除による影響を解析する。更に、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)とHCV感染由来肝硬変での治療効果と作用因子の差異についても検証する。
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Causes of Carryover |
NASHモデルマウスのCDAHFD給餌期間を14週としていたが、脂肪化による肝障害の程度が弱いことがわかってきた。さらに給餌飼料を検討し32週間、48週間の給餌を行って最適のモデルマウス作製を試みた。このために解析費用の支出が少なくなり、次年度使用額が生じた。解析の結果48週間の高脂肪食給餌がモデルとして最適である事が判明したため未使用額は次年度に向けて、試薬代、飼育代、解析費用等に当てる。
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