2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K06992
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
見市 文香 (三田村文香) 佐賀大学, 医学部, 講師 (70576818)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 球形化 / シスト壁の形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
赤痢アメーバはヒトの大腸に寄生し、アメーバ赤痢を引き起こす寄生原虫である。生活環は栄養型期とシスト期の2つに大別され、感染はシストの経口摂取による。シスト形成は原虫の伝播・生存に関わる重要な生物機構であるが、その制御機構は未解明なままである。現在我々は、シスト形成制御機構の全容解明を目指して、研究を進めている。 我々は、赤痢アメーバが合成する含硫脂質の1つコレステロール硫酸(CS)が栄養体からシストへの形態変化“シスト形成”制御に必須な分子であることを報告している(Mi-ichi et al, PNAS, 2015)。しかしながら、詳細な分子機構は不明であった。 CSの細胞内の濃度をLC-MS/MSを用いて測定したところ、栄養体よりシストの方が高く、共に100μM以上であることを見出した。これは宿主細胞の血清中のCSの濃度が数µMであることを考えると極端に高濃度である。数100μMのCSで栄養体の細胞を処理すると、CSの濃度依存的に細胞が球形化すること、アメーバ運動が抑制されることを見出した。さらに、シスト形成誘導時にアメーバ運動が正常に抑制されないと異常な形態のシスト(つぼ型シスト)が形成されることも見出した(Mi-ichi et al, Microbiol Spectr, 2021; 論文投稿中)。アメーバ運動の抑制が球形シストの形成を促す可能性を含め現在詳細な検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
コレステロール硫酸(CS)が栄養体からシストへの形態変化“シスト形成”制御に必須な分子であることを、我々は既に報告しているが(Mi-ichi et al, PNAS, 2015)、詳細な分子機構は不明なままであった。今回細胞内のCSの濃度の定量方法を導入、CSが赤痢アメーバの細胞内において、非常に高濃度で存在することを明らかにした。得られた濃度は、赤痢アメーバの培養細胞の形態変化を引き起こす濃度と一致していた。また、その形態変化は細胞の球形化であり、シストが球体であることと一致する。以上得られた結果は、CSのシスト形成における重要な役割を示唆するものであり、今後詳細な検討を行うことで、シスト形成におけるCSの機能を明確に出来ると考えられることから、当初の予定以上に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
[計画1] CSによる“細胞の球形化”・“細胞膜の透過性低下”制御の詳細な分子機構の解析を行う。リピドーム解析、RNAseq解析により細胞の球形化と細胞膜透過性の低下と相関する因子群を同定する。CS誘導細胞の細胞膜の変化を解析 ⇒ CSによる“細胞の球形化”・“細胞膜の透過性の低下”の分子機構の解明 [計画2] 形成されたシストは外界(乾燥、浸透圧変化、温度変化など)に抵抗性を持つ。シスト壁や細胞膜が抵抗性に関与することは予測されているが、分子機構は解明されていない。計画1で明らかにした分子群と環境変化への抵抗性”(水分蒸散の解析・低張液への耐性・温度耐性の試験)を解析、両者の相関を解析する。 ⇒“細胞膜の透過性低下”による“外界環境への耐性の獲得”との関連性の証明 [計画3] 新規薬剤標的およびリードの探索 ⇒“細胞膜の透過性低下”を阻害・促進する化合物を得、外界での耐性および宿主間伝播に与える効果から、感染拡大阻止に繋がるストラテジーの提示。
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Causes of Carryover |
網羅解析を初年度に予定していたが、次年度にも継続して行うこととなり、一部経費を次年度に使用することとした。かわりに次年度に予定していた生化学的解析を前倒して行っており、両方を継続して行っていく。
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