2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K06992
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
見市 文香 (三田村文香) 長崎大学, 熱帯医学研究所, 教授 (70576818)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | コレステロール硫酸 / シスト形成 / 超長鎖ジヒドロセラミド / 球形化 |
Outline of Annual Research Achievements |
赤痢アメーバはヒトの大腸に寄生し、アメーバ赤痢を引き起こす寄生原虫である。生活環は栄養型期とシスト期の2つに大別され、感染はシストの経口摂取による。シスト形成は原虫の伝播・生存に関わる重要な生物機構であるが、その制御機構は未解明なままである。現在我々は、シスト形成制御機構の全容解明を目指して、研究を進めている。 我々は、赤痢アメーバが合成する含硫脂質の1つコレステロール硫酸(CS)が栄養体からシストへの形態変化“シスト形成”制御に必須な分子であることを報告している(Mi-ichi et al, PNAS, 2015)。しかしながら、詳細な分子機構は不明であった。 これまでに、シスト形成におけるCSの機能が、細胞の球形化および超長鎖ジヒドロセラミドの合成誘導による膜透過性低下形成であることを見出し、原著論文として報告していた(Mi-ichi et al, mSphere, 2022)。CSによる超長鎖ジヒドロセラミド合成誘導の制御機構の解明を目指して解析を行なった結果、我々は、超長鎖アシル基を含む脂質種の合成が、栄養体期とシスト期で大きく異なること、栄養体期には超長鎖を含むリン脂質(ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール)の合成が、シスト期には超長鎖ジヒドロセラミドが合成されていることを見出した。超長鎖アシル鎖の合成にかかわる遺伝子の発現は栄養体とシスト期でほとんど変動が無いことから、超長鎖アシル基を持つ脂質種の合成の切り替えは、アシル基の導入酵素での制御が中心であると考えている(Mi-ichi et al. mSphere, 2023、Mi-ichi et al, 投稿中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
コレステロール硫酸(CS)によって合成が誘導される超長鎖ジヒドロセラミドの合成に着目、超長鎖アシル基の合成について詳細な解析を行なった。その結果、超長鎖アシル基を含む脂質種はセラミドだけではなくリン脂質にも検出されること、超長鎖アシル基を含むリン脂質(ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール)は栄養体期に合成されることを見出し、その合成経路の解析を行ない、原著論文として報告(Mi-ichi et al. mSphere, 2023)および投稿中である。また昨年度、報告した論文(Mi-ichi et al, mSphere, 2022)を基にCSのシスト形成における機能についての総説を発表することも出来ており(Mi-ichi et al, Parasitol Int, in press)、当初の計画以上に進捗していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在投稿中の原著論文を発表することに加え、コレステロール硫酸の合成を阻害する化合物の探索をすすめており、そちらも論文投稿する。
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Causes of Carryover |
現在論文を投稿中であり、掲載費用が次年度に生じた。また執筆中の論文についても、追加実験や投稿費用が必要であるため、次年度に使用額が生じた。
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