2022 Fiscal Year Research-status Report
肝臓・皮膚・腎臓の連関によるレンサ球菌感染症の重症化機構
Project/Area Number |
21K07002
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
小倉 康平 金沢大学, 新学術創成研究機構, 助教 (00586612)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | レンサ球菌 / 溶血性レンサ球菌 / 病原因子 / 流行型 / 臨床分離株 / 発現解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
高い溶血性を示すレンサ球菌Streptococcus dysgalactiae subsp. equisimilis (SDSE) は、高病原性菌として知られるStreptococcus pyogenesと同様に症例数が近年増大しており、発症後死亡あるいは予後不良となることが非常に多い。これまでの研究から、SDSEのみが有する宿主障害性・病原因子が明らかにされつつあるが、加齢・基礎疾患と重症化とを直接的に結びつける知見は未だ得られていない。本研究は、加齢・基礎疾患に起因する宿主状態の変化に着目し、ヒト常在細菌であるSDSEが宿主体内に侵入し病原性を発揮する一連の挙動を明らかにすることを目的とする。 令和4年度は、国内での分離頻度が高い2種類Clonal Complex (CC)17ならびにCC25タイプのSDSEについて、共同研究機関で近年分離された用いた株を用いて、それぞれが有する特性を解析した。 侵襲性感染症で高い頻度で検出されるCC17タイプについては、CC17タイプに固有の遺伝子を検出し、その遺伝子欠失が病原因子に与える影響を解析したが、いずれの変異株においても大きな変化は現在まで明らかにできていない。また、宿主体内での細菌側の病原因子産生を明らかにするために、細菌培養用培地とヒト血液成分含有培地の2条件で細菌の発現解析(RNAseq)を実施した。 また、CC25タイプの分離株には、重症型(劇症型感染症)由来株と比較的軽傷型(開放膿)由来株が含まれ、両株のゲノムを解析したところ、非常に類似していた。両株が示す病原性の差異について、2022年度の先進ゲノム支援(先進ゲノム解析研究推進プラットフォーム)のサポートを受け、発現解析(RNAseq)による比較ゲノム解析を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度は、国内での分離頻度が高い2種類Clonal Complex (CC)17ならびにCC25タイプのSDSEについて、性状解析、ゲノム解析、遺伝子破壊株作製を進め、さらには2022年度先進ゲノム支援のサポートを受け発現解析を実施し、研究を推進させることができた。ヒト成分(血清)を含んだ培地で生育した菌は、通常の細菌用培地の時と比較して多くの遺伝子の発現が上昇あるいは減少していた。CC17とCC25を比較した場合、共通した変化もみられたが、一部の増減はそれぞれのCCに固有であったことを見出している。 これまでの成果から、本課題研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画から大きな変更点はなく、順調に進展している。来年度以降についても、引き続き計画書の通り研究を進めていく。SDSEは多くの病原因子を産生することが知られているものの、SDSEは機能未知の遺伝子が多く存在し、その中には本菌固有の病原因子をコードするものが含まれている可能性が高い。令和4年度は、CC17ならびにCC25を対象として発現解析を行い、SDSEの新規病原因子候補が多く見出された。本研究の最終年度である令和5年度は、これら候補の遺伝子のクローニングによる性状解析あるいは遺伝子欠失が病原性に与える影響を明らかにしていく。
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