2023 Fiscal Year Annual Research Report
大規模ゲノム情報を利用した大腸菌における血清型変換の全貌解明
Project/Area Number |
21K07006
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中村 佳司 九州大学, 医学研究院, 講師 (60706216)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 大腸菌 / O抗原・H抗原 / 血清型変換 / Sequence type / 比較ゲノム解析 / 志賀毒素産生性大腸菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
大腸菌の血清型別に利用されるO抗原とH抗原は、合成遺伝子領域の組換えによって抗原型が変化すること(血清型変換)が知られている。本研究では、大腸菌における血清型変換の全貌解明を目的として、公共データベースに登録されている大腸菌をClonal complex (CC)ごとに分類し、系統解析と血清型変換の解析を行っている。 令和5年度では、志賀毒素産生性大腸菌(STEC)の主要血清型のひとつである、O103:H2を対象として解析を行なった。系統解析の結果、合計2,701のゲノム情報が利用可能なO103:H2菌株のうち、Sequence type (ST)のST1146 (8株)とST2307 (27株)の菌株がO103:H2の主要STであるST17とは明らかに異なる遺伝系統に属していることが明らかとなった。また、ST1146およびST2307菌株は、1株の志賀毒素(stx)遺伝子陽性株を除いてSTECの主要病原遺伝子を保有していないことから、これらの菌株はSTECではないことが明らかとなった。次に、STを定義する塩基配列を基準として、公共データベースからST17の近縁菌株を収集した。計4,452株の菌株セットには、O抗原が31種類、H抗原が4種類含まれており、各菌株の系統関係と血清型との関連を解析した結果、O103はO128から変換されたこと、その後の進化の過程で様々なO抗原の血清型変換を起こしたことが明らかとなった。また、stx遺伝子の解析から、主要サブタイプであるstx1aおよびstx2aは、O抗原がO103に変化した後で獲得されたことが分かった。以上の結果は、STEC O103:H2の情報基盤の高度化あるいは病原性進化にとって重要な知見であると考えられた。現在、O103:H2菌株の解析に関する研究成果を原著英語論文として報告する準備を進めている。
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