2023 Fiscal Year Annual Research Report
らい菌による宿主由来TAGを利用した細胞内寄生機構の解明と新規治療標的の探索
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21K07012
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
谷川 和也 帝京大学, 薬学部, 講師 (10443110)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 幸一 帝京大学, 医療技術学部, 教授 (20206478)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ハンセン病 / らい菌 / 脂質 / 細胞壁脂質 / ミコール酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
らい菌は宿主として主にマクロファージに寄生し、その感染細胞内には大量の脂質が蓄積される。我々はこの脂質がtriacylglycerolであることを示し、菌の生存に必須であることを明らかにしてきたが、そのような脂質が菌にどのように利用されているかは不明である。そこで我々は、菌が有する細胞壁脂質であるミコール酸に着目し、その合成材料をTAGから利用している可能性について研究を行なった。 らい菌が感染したTHP-1細胞ではTAG代謝物である脂肪酸が増加し、beta酸化が惹起されることを見出した。さらに、THP-1細胞に[14C]標識acetic acidを添加して14C標識TAGを合成した後にらい菌を感染させ、その全脂質を用いてHPTLC解析を行なうと、感染後短時間で脂肪酸画分にシグナルが検出され、続いてミコール酸画分にシグナルが検出された。そこで、得られたミコール酸画分のシグナルを検証するために、ミコール酸合成阻害薬であるイソニアジドで前処理すると、ミコール酸画分のシグナルは完全に消失した。宿主由来脂質が菌の細胞壁脂質として利用されているかを検証するために、THP-1細胞にBODIPY標識TAGを形成させた後、らい菌を感染させて24時間後に菌を単離し共焦点顕微鏡で観察した。その結果、一部の菌体に一致してBODIPYの蛍光が観察された。 らい菌は、ゲノム中に偽遺伝子や非翻訳領域が占める割合が非常に高く、機能する遺伝子が少ないことから細胞壁の複雑な脂質合成を含め宿主に対する依存性が強いと考えられている。そのため、らい菌はミコール酸合成の材料である脂肪酸をTAGから産出し、それを利用することにより宿主環境内で生存を維持すると考えられた。すなわち、らい菌の細胞壁脂質合成の阻害や、宿主細胞への脂質蓄積を抑制するような脂質代謝改善薬が新たなハンセン病治療として応用できる可能性が示された。
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