2022 Fiscal Year Research-status Report
ヘリコバクター・シネディにおけるVI型分泌系の生理生態学的役割の解明
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21K07026
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
後藤 恭宏 九州大学, 医学研究院, 助教 (20558358)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | Helicobacter cinaedi / VI型分泌系 / T6SS |
Outline of Annual Research Achievements |
Helicobacter cinaediと近縁菌株を含めたゲノム解析から、本菌にはVI型分泌系(T6SS)が特異的に存在することが明らかになった。T6SSはエフェクター分子を標的の細菌や真核細胞中に送り込むための細胞小器官であることから、本菌の病原性だけでなくヒト腸管での常在性にも関与する可能性が考えられた。そこで本菌におけるT6SSの生理生態学的な役割の解明するため、T6SS構成遺伝子の破壊株を作成した。遺伝子破壊株は、標的遺伝子の内部に薬剤耐性マーカーを挿入した配列をエレクトロポレーションにより導入し作成した。T6SSが菌の排除に利用されているか検討するために、野生型と破壊型を、それぞれ他の系統の株と共培養し一定時間後の菌数を計測した。本菌は寒天培地上でのコロニーカウントによる計測が難しいため、菌株特異的なプライマーを用いたdigital droplet PCRの実験系を構築し、各株の菌数を識別して計測した。DNAは、共培養下での各菌の割合を反映するよう、ビーズにより物理的な菌体破砕をおこない偏りなく精製した。さらに、H. cinaediの近縁菌種の実態を解明するなかで、タヌキから分離された近縁菌種が、T6SS構成遺伝子群をコードするプラスミドの保有が明らかになった。この構成遺伝子群はH. cinaediと類似していたが、構成遺伝子群に挟まれた領域は全く相同性が見られなかった。これらの領域にはT6SSエフェクター関連遺伝子群がコードされると推測され、エフェクターレパートリがT6SSを保有する菌の棲息環境に適応している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究は概ね順調に進展しており、次年度においても研究計画に沿って遂行する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は当初の予定通り進展しており、今後も研究計画に沿って遂行する。次年度においては、作成した遺伝子破壊株をもちいて競合菌種についてより詳細に解析する。
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Causes of Carryover |
消耗品の納期遅延があったため次年度使用額が生じた。次年度に消耗品の購入に充てる。
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