2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K07034
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
池辺 忠義 国立感染症研究所, 細菌第一部, 主任研究官 (20333362)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 病原性 / 劇症型溶血性レンサ球菌感染症 / レンサ球菌 / 侵襲性細菌感染症 |
Outline of Annual Research Achievements |
劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)患者分離株で変異のあった遺伝子が、病原遺伝子の発現の上昇に影響を与えているか確かめるため、STSS患者分離株に咽頭炎患者分離株のintactの遺伝子を持つプラスミドを導入した。導入した株からRNAを抽出し、RT-PCRにより遺伝子の発現量を定量した。STSS患者分離株にintactの遺伝子を導入することで、病原遺伝子の発現が咽頭炎患者分離と同じレベルになった遺伝子を選択した。 選択した遺伝子の変異により、病原遺伝子の発現が上昇するか調べるため、欠失変異体を作製した。変異株の作製には、pJRS233あるいはpSET4sを用いた。咽頭炎患者分離株がもつ目的遺伝子の破壊株を作製し、RNAを抽出した。これをRT-PCRにより発現量を定量し、STSS患者分離株でみられた目的の病原遺伝子の発現量の増加があるか確認した。これら遺伝子相補実験および遺伝子破壊実験で病原遺伝子の発現量の減少、増加が見られた遺伝子を原因遺伝子と決定した。 臨床分離株における原因遺伝子の変異頻度をしらべるため、同定した原因遺伝子について、G群レンサ球菌臨床分離株79株について原因遺伝子の塩基配列を決定した。塩基配列を決定したのち、アミノ酸配列に翻訳して変異領域のマップを作製した。 ゲノムワイドな遺伝子発現制御解析をするため、咽頭炎患者分離株、咽頭炎患者分離株の原因遺伝子を変異させた株、変異を既に見出している遺伝子を変異させた株からRNAを抽出し、RNA-seqを行った。咽頭炎患者分離株の発現量より咽頭炎患者分離株の原因遺伝子を変異させた株において発現量が高いものを同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画の5つの段階のうち、4つまで進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
原因遺伝子の変異によりin vivoで病原性に影響を与えるか調べるため、マウスをもちいた動物実験を行う。咽頭炎患者分離株、咽頭炎患者分離株の原因遺伝子を変異させた株について様々な菌濃度の菌液を調製した後、各菌株を5-6週齢のddYマウスの腹腔内に接種して7日間経過観察し、各株の生存曲線を作成する。 STSS患者では、腎障害など多臓器不全がみられることから、原因遺伝子の変異により腎臓、および、肺に障害が起きるか調べる。ddYマウスの腹腔内に菌を接種後24-48時間の腎臓、および、肺を摘出して病理組織標本を作製し、ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色を行い、病理組織検査を行う。 STSS患者では壊死性筋膜炎や軟部組織壊死がみられる。原因遺伝子の変異によりこのような病態がみられるか調べるため、ヘアレスマウスの皮下に菌を接種し、経過観察する。壊死を起こした皮膚の領域を測定し、それぞれの株で比較する。マウスから、接種後48-72時間の皮膚、皮下、および、筋肉組織を摘出する。その後、病理組織標本を作製し、HE染色を行い、病理組織検査を行う。
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Causes of Carryover |
年度末納品等にかかる支払いが、令和5年4月1日以降となったため。 当該支出分については次年度の実支出額に計上予定であるが、令和4年度分についてはほぼ使用済みである。
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