2022 Fiscal Year Research-status Report
ウイルス感染を制御する宿主の新規抗ウイルス因子の同定
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21K07048
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
中津 祐一郎 国立感染症研究所, ウイルス第三部, 主任研究官 (70572113)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 風疹ウイルス / 抗ウイルス応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
ウイルス感染を制御する宿主の抗ウイルス因子を同定することを目標とし、CRISPR-dCAS9遺伝子発現活性化型ライブラリーと風疹ウイルスを用いたスクリーニングを計画している。令和4年度は、上述の遺伝子発現活性化型ライブラリーの導入に先立って、昨年度までに構築した組換え風疹ウイルスによる細胞死を指標としたスクリーニング系の条件検討、およびその性能評価を実施した。本スクリーニング法は、宿主インターフェロン(IFN)経路をCRISPR-Cas9法によるゲノム編集により欠損させ、風疹ウイルスが高効率に増殖できるように改変した培養細胞を用い、本来は細胞障害性をほとんど有しない風疹ウイルスに自殺遺伝子である単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ(HSV-TK)を導入した組換え風疹ウイルスを感染させた際に、新たに風疹ウイルス抵抗性をライブラリーなどにより外来的に獲得した細胞のみが生存することを利用した方法である。この系の性能を評価するために、風疹ウイルスの増殖を抑制しうる遺伝子を導入した細胞の生存の程度を評価することを検討した。しかしながら、これまでに風疹ウイルスの増殖を抑制できる宿主遺伝子はほとんど同定されておらず、まずこれまでに他のウイルスへの抗ウイルス活性が報告されているIFN応答性遺伝子(ISG)の風疹ウイルス抑制能について解析した。16種類のISGを上述の風疹ウイルス高感受性培養細胞に発現させたところ、6つのISGが風疹ウイルスの増殖を有意に抑制できることが明らかとなった。その中の2種類のISG発現細胞に、HSV-TK発現組換え風疹ウイルスを感染させたところ、ISG非発現細胞が全滅するタイミングでも、細胞が50~70%生存することが確認できた。このことから本スクリーニング系は、各種ライブラリーなどを用いて、ウイルス抵抗性因子を同定するための有用なツールであることが期待できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
CRISPR-dCAS9遺伝子発現活性化型ライブラリーを用いた宿主抗ウイルス因子の同定を行う上で、これまでに構築したスクリーニング系の条件検討や、詳細な性能評価を行っておくことが、本研究の成否に大きく影響すると考えた。そこで令和4年度には当初の予定にはなかった、風疹ウイルス抵抗性遺伝子の探索と、それらの遺伝子を発現させた際の本スクリーニング法における結果の解析を行なったため、計画時の予定よりやや遅れた。しかしながらその結果、本スクリーニング法が、風疹ウイルス増殖の抑制因子の同定に有用であることを明らかとした。また、これまでに未解明であった風疹ウイルスを抑制しうる複数の宿主遺伝子を同定することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに作製し、その有用性が十分に評価できた、IFN非応答性で風疹ウイルス高感受性の培養細胞に、CRISPR-dCAS9遺伝子発現活性化型ライブラリーを導入する。作製できた細胞群に、既に作製済みの単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ(HSV-TK)を発現する組換え風疹ウイルスを感染させ、HSV-TKによる細胞死を誘導するガンシクロビルで処理した後に生き残る風疹ウイルス抵抗性細胞を選択する。回収した細胞からゲノムDNAを回収し、次世代シークエンスにより新規抗風疹ウイルス因子候補を同定する。その際には、令和4年度までに新規に同定できた抗風疹ウイルス因子も同定できているか確認することで、スクリーニングの成否の判断材料とする。各候補遺伝子の欠損細胞の作製をCRISPR-Cas9法によるゲノム編集により行い、表現系を確認することで、新規抗ウイルス因子の詳細な風疹ウイルス抑制機序を解明する。
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Causes of Carryover |
(理由)当初の予定にはなかった、スクリーニング系の性能評価実験を令和4年度に行なった。その結果、令和4年度に実施する予定だった、CRISPR-dCAS9遺伝子発現活性化型ライブラリーを用いたスクリーニングを令和5年度に持ち越したため、次年度使用額が生じた。 (使用計画)令和5年度に予定している解析には、スクリーニングや次世代シークエンスなど比較的費用が多く必要なものがあるので、それらに使用する。
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