2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of inhibitors targeting enzymatic activity of SARS-CoV-2 proteases
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21K07050
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
星野 忠次 千葉大学, 大学院薬学研究院, 准教授 (90257220)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 抗ウイルス薬 / 計算機スクリーニング / X線結晶構造解析 / 薬物有機合成 / 阻害活性 |
Outline of Annual Research Achievements |
SARS-CoV-2に有効な抗ウイルス薬を創出するために、理論計算・X線結晶構造解析・有機合成・タンパク質レベルの生化学実験を融合させた複合的な研究を遂行した。初めに、高度情報科学技術研究機構(HPCI)の新型コロナウイルス感染症対応臨時課題により、東京大学情報基盤センターのスーパーコンピューター(Oakbridge-CX)を用いて、3CLプロテーゼ、PLプロテアーゼ、ポリメラーゼの3つの標的タンパク質に対して効果があると期待される薬物を選定した。選定した薬物から58種類を購入した。SARS-CoV-2の3CLプロテーゼならびにPLプロテアーゼを、組み換えタンパク質として発現精製した。精製した酵素タンパク質を用いて、3CLプロテーゼならびにPLプロテアーゼに対する購入薬物の阻害活性を測定した。その結果、5種の化合物に明確な阻害効果が認められた。3種類の化合物については、3CLプロテーゼおよびPLプロテアーゼの両者に対して阻害活性を示した。 HIV-1治療薬のネルフィナビルは、SARS-CoV-2に対して抗ウイルス活性を示すことが報告されている。ネルフィナビルの類縁体について、有機合成を行った。タンパク質レベルの測定では、合成した類縁体はネルフィナビルよりも強い阻害活性を示したものの、協力研究者が行ったウイルス活性測定では、顕著な阻害活性は認められなかった。細胞への透過性などを考慮した化合物構造の改変が必要であることが判った。幾つかの類縁体を合成して阻害活性の測定を行い、必要とされる化学構造を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計算機スクリーニングの結果に基づいて、認可薬あるいは臨床検査薬でSARS-CoV-2の有する酵素タンパク質について、阻害活性を示す薬物が選定できた。この中には既に活性阻害の報告がされているいるものもあり、インシリコ・スクリーニングの精度は、満足できるおのであった。さらに未だ阻害能が報告されていない薬物もあり、今後の研究において、深く調べていく必要のある薬物が見いだせた意義は大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に阻害活性のある薬物を同定できたこと、ウイルス酵素の組み換え体を発現精製できたことを受け、阻害薬物と標的タンパク質の結合構造について、X線結晶構造解析を試みる。さらに結合構造の解明が進んだ段階で、結合阻害を増強するための化合物改変設計を行い、実際に有機合成にて新規の化合物を得る。標的タンパク質の発現精製、酵素活性阻害評価、化合物と標的タンパク質との共結晶化など、準備研究は十分に進み、有効な阻害薬が創出できると期待される。化合物の改変設計においては、官能基付加や官能基置換をした修飾化合物など、活性増加の見込める改変分子構造を、数千種類程度、考案する。考案した化合物と標的タンパク質との相互作用を計算機で解析して、改変構造の有効性を評価する。独自ソフトウェア「Orientation」により結合構造と結合親和性を算出する。計算機解析により有望と判断された化合物構造とその誘導体の有機合成を行う。必要に応じて、薬物動態を考慮した官能基修飾を施して、候補化合物の合成を進める。同定された薬物は、認可薬ならびに臨床検査薬から選び出されている。従って、毒性試験などが十分に行われた薬物であり、安全性の面では申し分ない。そこで骨格構造の大規模な変換は避けて、まずは官能基置換などでの活性の向上を目指す。合成化合物について、酵素レベルの測定ならびにウイルス感染実験により、SARS-CoV-2増殖阻害活性の評価を行い、増殖阻害活性測定・酵素阻害活性測定の結果を、化合物の設計と合成に反映させ、候補薬物の最適化を行い、有望なリード化合物を得る。
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