2022 Fiscal Year Research-status Report
Identification of host factors interacting with acetylated influenza A virus
Project/Area Number |
21K07058
|
Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
畠山 大 徳島文理大学, 薬学部, 准教授 (20514821)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | インフルエンザウイルス / NP / アセチル化修飾 / インタラクトーム解析 / PA |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,インフルエンザウイルスのNPに対するアセチル化修飾の生物学的意義を解明することを目的とし,アセチル化されたNPとの相互作用因子を網羅的に解析するものである.手法としては,NPの組換えタンパク質を用いて実験を行う予定だが,本研究室で従来行ってきた大腸菌で組換えタンパク質を作製する方法では,発現させている過程で,どうしてもNPがアセチル化修飾を受けてしまうことが分かっている.そこで,無細胞系組換えタンパク質合成キットであるPUREflexを用いて試験管内で合成を行うことにした.これまでの研究では,インフルエンザウイルスNPの発現プラスミドへのクローニングを完了した.そして,抗NP抗体および抗Streptag抗体を用いたウェスタンブロッティングにより,PUREflexによる発現にも成功したことを確認した.しかし,抗アセチル化リジン抗体を用いた解析を行ったところ,アセチル化酵素と反応させていないにも関わらず,シグナルが確認されてしまった.PUREflexには,アセチル化酵素の類は一切含まれていないことから,抗体の非特異的結合であると考えられるが,現時点では確証はない.そこで,質量分析などで,アセチル化修飾の有無を正確に解析することを視野に入れている. また,インフルエンザウイルスPAのアセチル化修飾に関する論文を発表することができた.宿主側のアセチル化酵素が,PAの19番目のリジン(K19)をアセチル化し,それによってPAエンドヌクレアーゼ活性が増強された。宿主のアセチル化酵素を使ってPAのK19をアセチル化させ,PAエンドヌクレアーゼ活性を増強し,より効率よくウイルスmRNAを合成させているのではないか,という新規な「宿主と病原体との攻防」であると考えられる.加えて,新型コロナウイルスのNタンパク質も,試験管内においてアセチル化を受けることも報告した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね順調に進展していると考えている.本研究は,「アセチル化されたタンパク質と相互作用する因子の同定」という,前例のない研究課題に挑戦するものである.インフルエンザウイルスNPに加えて,新型コロナウイルスのNPでも同じ実験を行っている.現時点で,インフルエンザウイルスNP発現用のプラスミドと新型コロナウイルスNP発現用のPCR産物の構築,目的タンパク質の発現,Streptagによるプルダウンまで順調に推移している. また,最近はインフルエンザウイルスPAでは,K19以外の2箇所のリジン残基も新たなアセチル化修飾の標的候補として同定し,これらのリジン残基を変異させた組換えタンパク質の作成も既に終了した.今後はこれらの組換えタンパク質を用いて,アセチル化修飾の有無を生化学的に検証する.
|
Strategy for Future Research Activity |
現時点での課題は,無細胞系組換えタンパク質合成キットPUREflexで作成したインフルエンザウイルスNPが,既にアセチル化されていないかどうかの確認が不十分である,という点である.確認方法として,現状では抗アセチル化リジン抗体を用いたウェスタンブロッティングを行ったが,シグナルが検出された.PUREflexの溶液にはアセチル化酵素もアセチルCoAも含まれていないので,アセチル化されているとは考えにくく,抗アセチル化リジン抗体の非特異的結合と考えられる.そこで,質量分析により,アセチル化の有無を詳細に確認する.アセチル化されていないことが確認できた後は,Strep-Tactinが付加されたビーズでタンパク質を捉え,アセチル化酵素とアセチルCoAを混合し,アセチル化を施す.これに,細胞のライセートを加え,アセチル化修飾依存的な相互作用因子のスクリーニングを目指す. インフルエンザウイルスPAでは,新たなアセチル化修飾の標的候補リジン残基を変異させた組換えタンパク質を用いて,アセチル化修飾の有無を生化学的に検証する.
|