2022 Fiscal Year Research-status Report
Investigations of the molecular mechanisms by which the host factor MARCH8 shows a broad antiviral spectrum
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21K07060
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
徳永 研三 国立感染症研究所, 感染病理部, 主任研究官 (50342895)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | MARCH8 / ウイルスエンベロープ糖蛋白質 / シュードウイルス / 抗ウイルス活性 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々が以前報告した新規抗ウイルス宿主因子MARCH8のHIV-1 エンベロープ糖タンパク質(HIV-1 Env)に対する抑制効果について、由来する動物種別に検討した。サル(rhesus macaque)、マウス、およびウシMARCH8の野生型および2種類の変異体(RING-CH変異体、チロシンモチーフ変異体)を作製した。これらのHIV-1 Env抑制活性を検討するため、それぞれのMARCH8をHIV-1 Env欠損型ルシフェラーゼレポーターウイルスDNAとHIV-1 Env発現ベクターとともにヒト胎児腎細胞株293Tにコトランスフェクションして、産生されたウイルスの感染性を検討した。その結果、ヒトMARCH8と同様、サル、マウス、ウシMARCH8も、その野生型はHIV-1 Envに対する抑制能を保持しており、両変異体はどちらも抑制活性を失っていた。このことからMARCH8の抗HIV-1活性およびその機能領域は、動物種間で高度に保存されていることが明らかになった。また抗ウイルス活性を欠くMARCH3とMARCH8 のキメラを複数作製して実験を行った結果、MARCH8のN末端側およびC末端側の細胞質領域が重要であることが分かった。後者はMARCH3がC末のチロシンモチーフを持たないことに矛盾しないが、前者についてはMARCH3にもRING-CH領域があることからMARCH8のRING-CH特異的な抗ウイルス効果が考えられた。最後に、MARCH8を枯渇させたマクロファージと対照マクロファージにHIV-1を感染させた後、T細胞株と共培養して感染効率を比較した。その結果、両者に差は認められないことから、MARCH8はHIV-1の細胞-細胞間感染を抑制できないことが明らかになった。これは恐らくMARCH8がHIV-1 Envを細胞表面から完全に消失させることが出来ないためと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
一昨年4月より熊本大学大学院博士課程に入学して私の指導の下で研究を開始する予定だった中国人留学生の孔徳川氏は、入国制限のために13ヵ月間半の間、来日できなかったが、昨年5月中旬にようやく日本での生活をスタートすることとなった。ただ孔氏はこれまで上海CDCにおいて疫学専門の部署で勤務してきており、ラボでの実験経験は皆無であったため、ピペットの持ち方や細胞培養の基本から始めなければならなかった。孔氏に対する様々な実験手法の指導やウイルス学・免疫学・分子生物学・細胞生物学に関する講義にかなりの時間を費やした結果、実際に実験結果が出るようになるまで半年以上を要した。その間に、神戸大の亀岡正典先生との共同研究や、東大医科研の佐藤佳先生を中心したThe Genotype to Phenotype Japan(G2P-Japan)コンソーシアムメンバーとしてのプロジェクト参加により、それぞれの共著論文(PLoS One. 2022; J Infect Dis, 2022)に関わった。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度(2023年度)は、MARCH8の宿主コファクターの同定を試みる。まず他の動物種由来のMARCH8で報告されている関連因子の発現ベクターを作製してピンポイントで検討する。MARCH8と当該関連因子を共発現させて免疫沈降を行い、両者の相互作用が確認できた場合、標的宿主因子のノックダウン/ノックアウト実験を行う。それによりMARCH8の抗ウイルス活性における宿主コファクターの要求性を検証する。更にMARCH8との結合領域の同定を行う。同時に網羅的解析として、MARCH8の安定発現293T細胞株を作製して大量調整を行い、抗MARCH8抗体を用いた免疫沈降により、MARCH8と結合するタンパク質を調製して、膜タンパク質LC‐MSプロテオーム解析によりMARCH8の結合タンパク質を同定する。上記と同様にMARCH8との分子間相互作用の確認、ノックダウン/ノックアウト実験によるMARCH8の機能解析、および結合領域の同定を行う。
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Causes of Carryover |
年度末納品等にかかる支払いが、令和5年4月1日以降となったため。 当該支出分については次年度の実支出額に計上予定であるが、令和4年度分についてはほぼ使用済みである。
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Research Products
(4 results)