2022 Fiscal Year Research-status Report
病原真菌Aspergillus fumigatusに対する感染防御機構の解明
Project/Area Number |
21K07063
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
西城 忍 千葉大学, 真菌医学研究センター, 准教授 (60396877)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 感染免疫 / 真菌感染 / サイトカイン / C型レクチン / NK細胞 / 感染防御 |
Outline of Annual Research Achievements |
Aspergillus fumigatus (A. fumigatus)は、真菌(カビ)の一種で環境中に常在するため、ヒトは日常的に暴露されている。通常、健常人に病気を起こすことは稀であるものの、高齢者やがん患者など免疫機能が低下した患者に対して、生命を脅かす重度の侵襲性感染症を引き起こすことが多く、問題となっている。しかし、A. fumigatusに対する宿主防御の機構はこれまで不明な部分が多く残されていた。そこで、本研究では、糖鎖を認識する分子群であるC 型レクチン受容体(CLR)ファミリー分子がA. fumigatusを認識後、排除するまでの機構について解明することを目的とした。 今年度は、種々のC 型レクチン受容体ファミリー分子の欠損(KO)マウスを用いて感染実験を行った。その結果、Dectin-1 KOマウスでは野生型(WT)マウスと比較し、生存率が有意に低下することから、この分子が 全身性アスペルギルス症に対する防御機構に不可欠であることが明らかとなった。また、各臓器でのCFUアッセイの結果、腎臓で顕著に菌数が増加していた。また、A. fumigatus排除の機構を検討したところ、腎臓における A. fumigatus の排除はナチュラル・キラー(NK)細胞に依存していることを見いだした。さらに、Dectin-1がA. fumigatusを認識し、サイトカイン IL-15 の分泌を誘導することでNK細胞の生存を支持していることを明らかにした。また、Dectin-1/IL-15/NK細胞を介した機構では、過剰な炎症反応を誘発せずに病原体を排除し、臓器の恒常性を維持していることも示した。これらの結果から、真菌症に対する新たな治療法が開発されることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は、C型レクチンファミリー分子のDectin-1 が全身性アスペルギルス症に対する防御機構に不可欠であることを明らかとした。さらに、その機構として、1)NK細胞がA. fumigatusの排除において中心的な役割を担っていること、2)腎臓に局在するマクロファージに発現するDectin-1からのシグナルがIL-15の分泌を誘導すること、3)分泌されたIL-15がNK細胞の生存を支持すること、の3点を見出した。 これまで、C型レクチンファミリー分子からのシグナルは、T細胞をIL-17産生性のTh17細胞に分化誘導することで、好中球を感染局所へ集積させ菌体を排除する機構が知られていた。今回の研究結果は、これらの機構とは異なる新しいメカニズムが存在することを世界で初めて示したもので、当初の計画以上に進展したと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、C型レクチンファミリー分子のDectin-1 が全身性アスペルギルス症に対する防御機構に不可欠であることを明らかとした。今後は、他のC型レクチンファミリー分子がA. fumigatus感染時にどの様な役割を担っているのかを検討する。
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