2021 Fiscal Year Research-status Report
炎症抑制能を有する腸管上皮間リンパ球の分化誘導機構の解明
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21K07084
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大野 恵子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (50645611)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
筋野 智久 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (40464862)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 腸管上皮間リンパ球 / 転写因子 / 炎症性腸疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患(Inflammatory bowel disease;IBD)は、慢性消化管炎症をきたす疾患であり、本邦でも増加の一途を辿っている。腸管粘膜には炎症励起に関与するヘルパーT細胞と、炎症抑制に関与する制御性T細胞が存在するが、これらの免疫細胞のバランスが腸管免疫の恒常性維持に重要であり、腸管免疫の恒常性の破綻がIBDの病態の一つとして考えられている。近年、腸管上皮間にCD4とCD8αを両方発現するユニークな細胞集団(CD4IEL)が存在し、炎症抑制能を有し、IBD患者で減少することから、CD4IELの分化誘導機構の解明がIBDの新規治療開発に重要であると考えられる。CD4IELの分化にはレチノイン酸、TGFβ、IFNγなどのサイトカインや腸内細菌の存在が必須であり、それらのシグナルにより誘導されるThPOKの減弱とT-bet, Runx3の上昇など転写因子の発現変化が必要である。一方で、なぜCD4IELが腸管上皮間のみでしか観察されないのかは不明である。近年、2光子顕微鏡の使用により、腸管内における免疫細胞の局在、動態を解析することができるようになっており、本研究では、腸管上皮間CD4IELの動態を含め、分化に関わる詳細な制御機構を明らかにすることを目的として検討を行った。 腸管にホーミングするにはT細胞はCCR9、α4β7といった因子を発現しており、腸管内のT細胞を中心にCCR9、α4β7の発現を解析した。腸管粘膜固有層内におけるCCR9、α4β7の発現は高かったものの、腸管上皮内に存在するT細胞での発現は減弱していた。さらに興味深いことに、腸管内において粘膜固有層、腸管上皮内を往来できる制御性T細胞においては発現が維持されていることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
腸管上皮間CD4IELの分化や免疫細胞の動態に関わる各種遺伝子発現を解析し、抽出された複数の遺伝子を特異的に欠失したマウスを作成し、CD4IELの分化について検討した。また、抽出された遺伝子産物と転写因子発現との関わりをChIP-seqにて検討した。さらに、サンプル回収に時間を最も要すると考えられるヒトIBD症例の腸管手術検体を入手し、ヒト腸管検体の免疫細胞採取の手法を確立し、ヒト検体における転写因子発現を解析した。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は、抽出された複数の遺伝子を特異的に強制発現したマウスを作成し、CD4IELの分化について検討するとともに、2光子顕微鏡を用いて免疫細胞の動態を比較検討する。並行して、ヒト腸管手術検体のサンプル回収を継続し、マウスで得られた知見と同様かを検討する。
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Causes of Carryover |
2021年度はマウス飼育室改修に伴い一時的に繁殖数を減らす必要があり、マウス管理費が減少した。2022年度は改修が終了し、解析のためのマウス作成、維持を行うため、予定通り実験を遂行する。
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